とても怖い話になる、はずだった。冒頭の部分にはドキドキさせられる。エマ・ワトソンが「サークル」に入社して、驚きの毎日を過ごす部分は、彼女と同じように「凄い、凄い!」と思いながら見ていられる。でも、それはただの導入でしかない。そこから本題に入ったとき何を見せることになるのか、と期待した。なのに、前半は『トゥルーマン・ショー』の再現でしかなく「そんなのあの映画がもう10年以上前にやって . . . 本文を読む
遊劇体『のたり、のたり、』
初演は震災から3年後の98年、アトリエ劇研。CTTプロヂュースとして、キタモトさんの演出で上演された。もちろん、見ている。重くて暗い芝居だった。『カラカラ』以降、震災と寄り添う深津さんの想いが伝わる作品をキタモトさんができるだけ感情的にならずに、冷静に丁寧に見せていく。そんな作品だった気がする。
あれから約20年。今回の再演は、きっと前回以上に、ノス . . . 本文を読む
極東退屈道場『ファントム』
今回ターゲットにして取り組むのは「コインロッカー」である。毎回、「都市」の中のとあるひとつのアイテムを取り上げ、そこを中心にして、そこから抽象的なさまざまなドラマを想起し展開していく林慎一郎の新作。
0から始まる20のモジュール(と、彼が呼んでいる)で構成される。パンフにはモジュールの説明もある。「モジュールとは、システムを構成するひとまとまりの機能 . . . 本文を読む
カラ/フル『カラコレ その4 幸せの黄色いマスク 宇宙人に、桃色吐息を』
この1年で4回の小さな公演を打ち、色をタイトルにして7つの短編を上演した。まさに虹色である。カラフルらしい。会場も変化に富む。谷四のマンションの一室、南田辺の民家。日本橋の劇場での公演を(火曜日のゲキジョウに参加)挟んで、今回の福島のテナント・ビル。まるで異質な4会場を使用した。
作品の . . . 本文を読む
『火花』
こんなにも暗くて重い映画を平気で作れる。板尾創路ってやっぱり凄いと思う。これは秋の東宝映画の大作映画として、全国公開される(ミニシアターではなく、番線に拡大で掛かる!)作品なのである。なのに、全く気負うことなく自然体。一応メジャー作品なのに、遠慮はない。作者の「こうであらねばならない」という確固とした意志と自信に貫かれている。2時間全く迷いがない。
& . . . 本文を読む
ねじめ正一『ナックルな三人』
若年性認知症55歳の有名な絵本画家と、同じ年なのに新人の絵本作家。一緒に絵本を作ることになった。でも、それは画家が仕組んだこと。ふたりはナックルを通して繋がっていたことを、作家は知る。幼なじみだったのに、忘れていた。覚えていたのは今認知症になり、記憶を失おうとしていた画家のほうだ。
少年の頃、誰もがしたように野球をしていた時代。ナッ . . . 本文を読む
『太陽の蓋』
なんとこんな映画がこの国では作られていたのだ。しかも、昨年の夏、ひっそりと公開されていた。それは、ちょうど『シン・ゴジラ』の公開時期と重なる。この2本は内容も(テーマと描き方、そのいずれも!)とてもよく似ている。なのに、あの映画は大ヒットしてこれはまるで話題にもならずに消えていく。世の中って残酷だ。
正直言おう。これは凄い映画だ。今の日本でこんな映 . . . 本文を読む