これはある大家族の物語。変わりゆく世界の中で変わらないままを望むのは難しいことなのだろうか。新しいことが正しいわけではない。だけど、古いものに固執していても前には進めない。
冒頭の子どもたちの遊ぶ姿を見てこれはきっと傑作に違いないと思った。打ち捨てられた廃車の中で3人はドライブする。いやなんか敵と戦っているみたい。リーダーの少女と少し歳下の双子の男の子たち。カメラは狭い車から出ない。フレームの外に出ることはない。この小さな世界で想像する無限。そこから映画は始まる。
しかし、彼らはそこから追い出される。彼らの夢の場所である車は撤去される。そして、彼らの三世代に渡る家族が暮らす桃農園もこの夏限りで同じように撤去されることになる。地主は桃の木を伐採してここにソーラーパネルを敷き詰めるというのだ。土地の再開発は彼らの生活を豊かにするのだから(ソーラーパネルの管理を任せるという)ウィンウィンではないか、と地主は言うけど。
ずっと桃を作ってきた。決して豊かではないが、幸せに暮らしてきたのだ。近代化の波はこんなカタルーニャの田舎の村にもやって来て、困惑させる。ラストのストライキシーンはこれが彼らだけの問題ではないことを明確にする。
映画はひたすら最後の収穫を丁寧に描く。そこにはへんな感傷はない。短いエピソードを淡々と積み重ねていく。(いささか説明不足だけど)少女の視点からではなく、家族全員のお話を並行して描いていく。(そこが僕には少し物足りないけど仕方ない)そして、あまりにあっけないラストへ。そこはいい。ショベルカーが桃の木をなぎ倒していく。切ない。