最初の『卒婚式』がいい。こんな淋しさを抱えて生きていくのか。夫は、自分はまるで妻のことなんか考えもせずに生きてきたのか、と初めて知る。
豪華列車「ななつ星」の旅は結果的に卒婚式になる。妻が切り出しことを知っていたけど、何も言わなかった。自分が信じたまま生きてきた。自分勝手な40年間。
結婚から30年。子どもも手を離れて夫の両親も看取った。これからは自分の人生を生きることにする。そんな妻の決意を受け止めるしかない。自業自得だけど、やはり寂しい。
すべて絵本が出てくる5つお話からなる短編集である。『ほら、みて』『だいすき、だいすき』『鍵key』『いつもどおり』。いずれも作中の絵本のタイトルである。小説のタイトルではない。いや、最初の2作はそうだけど、次の2作はタイトルと同じだった。
死についてのお話。あるいは「何か」が終わりを告げる瞬間。それは新たな始まり。だけどいずれも寂しくて。だから、旅立ちとはいい難い。
最後は『青い絵本』。登場する絵本のタイトルは『あお』。義母と娘の共作。死にゆく義母の書いた童話に絵を添える。
『卒婚旅行』は以前『ほら、みて』というタイトルで読んでいた。(アンソロジーの『星が流れた夜の車窓から』)巻末の初出一覧で知る。忘れていたのではない。なんとなく覚えていた。