とても怖い話になる、はずだった。冒頭の部分にはドキドキさせられる。エマ・ワトソンが「サークル」に入社して、驚きの毎日を過ごす部分は、彼女と同じように「凄い、凄い!」と思いながら見ていられる。でも、それはただの導入でしかない。そこから本題に入ったとき何を見せることになるのか、と期待した。なのに、前半は『トゥルーマン・ショー』の再現でしかなく「そんなのあの映画がもう10年以上前にやってることじゃないか!」とガッカリさせられる。
では、その先の後半戦はどうなるのか。常に監視されていることが、我々をどこに誘うか。さらには、この世界のその先には何が待ち受けているか。大事な核心部分で一発逆転が描かれるか、と期待した。でも、そこでも、さらなる失望が待っている。どういうことだ、この映画は!
サークル社の代表であるトム・ハンクスのカリスマ性が簡単に剥がされていく。こんなただの勧善懲悪ではダメじゃん。
なぜ、こんなことになったのか。リアルな現実の先にある未来を提示していくはずの映画が、想像力すら駆使せず萎んでいく。ふつうの娯楽映画ならそれはそれでいいけど、それならそれで、こんな地味な映画をわざわざ見たいとは思わないし。