10の短文小説。眠れない夜に何をどうするかを描く。深夜の台所。夜の街、森、廃墟と化した遊園地。眠り続ける妻。明日の引越しのためにダンボール詰めをする夜。眠れない夜には何故か雨が降る。
10の断片は失われた記憶。こんなことがあったかもしれない。もうここにはいない人。ここにいるのに遠い人。たったひとりの静かな夜。寝静まる街。知らない誰かとふたり歩く。それは現実ではなく、夢かもしれない。おぼろげな記憶は一瞬で消えていく。朝には何も残らない。
千早茜らしい短編集。一瞬で読み終えてしまい、忘れてしまう。だけどこの寂しさは心にしっかり残る。