習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

ねじめ正一『ナックルな三人』

2017-11-26 21:46:35 | その他

 

ねじめ正一『ナックルな三人』

若年性認知症55歳の有名な絵本画家と、同じ年なのに新人の絵本作家。一緒に絵本を作ることになった。でも、それは画家が仕組んだこと。ふたりはナックルを通して繋がっていたことを、作家は知る。幼なじみだったのに、忘れていた。覚えていたのは今認知症になり、記憶を失おうとしていた画家のほうだ。

 

少年の頃、誰もがしたように野球をしていた時代。ナックルなんていうマイナーな球種を擁して、ちょっと目立っていたみたい。そんな彼に憧憬の目を向けていた。失われていく記憶の片隅から甦ってきた男を通して、人生の終焉に向かう自分をもう一度、輝かせようとする。それを助ける。そんなふたりの間に入って、ナックル大好き少女だった女性が過ごす三人の季節。

 

人生の終盤戦。最後の輝き。まだ55歳なのに。読みながら、なんだか自分のことのように感じて、何度となく涙が止まらない瞬間を体験した。同世代だから、しかも、認知症が切実な問題繋がりだから。(僕が、ではなく、僕の場合は母親が、だけど)先日の『ベトナムの風に吹かれて』もそうだったけど、50代、60代の青春映画(青春小説)がこれからはどんどん増えてくるのか、なんて思わされた。(まぁ、たまたま、だろうけど)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『太陽の蓋』 | トップ | 『火花』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。