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映画・演劇のレビュー

劇団往来『バガボンド・ララバイ』

2019-10-29 23:47:10 | 演劇
サブタイトルには「近松門左衛門半生記」とあるけど、真正面から近松を描いたわけではない。無名劇団の劇作家が近松を主人公にした戯曲を作る話だ。それをコメディタッチで見せていく。現代のお話の中に劇中劇として、入れ子構造で近松の物語が描かれていく。その対比から近松門左衛門という男の半生が描かれ、それが無名の若い劇作家の生き方とシンクロしてくる、というのがこの手の作品のパターンなのだが、彼と近松を重ね合わせ . . . 本文を読む
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ヤクタタズ!Project『ヤクタタズ!』(第一幕第一場「路上にて」)

2019-10-29 23:35:09 | 演劇
  太宰治の『人間失格』を読んだとき、誰もが「オレも(私も)人間失格だ」と思ったように、この作品を見た私たちは、自分もまたヤクタタズだ、と思うようになるだろう。だがそれは誰もが共感する、ということではない。ヤクタタズという負の存在である自分を意識することは誰にでもある。それを受け入れるところから始まる。この象徴的な作品が指示するものは明確ではない。ヤクタタズというふうに言われ、だから殺 . . . 本文を読む
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下鴨車窓『微熱ガーデン』

2019-10-29 23:09:40 | 演劇
  このなんとも不思議な芝居を見ながら、彼女たちの時間に観客である僕たちも迷い込む。ふたりの女と、彼女たちのところにやってきた男。階下の老人の死からスタートして、禁止されている草を秘密で育てる彼女の日常が、スリリングに描かれる。もうひとりの女は、そんな彼女に仕事を依頼し、時たまやってきては様子を見る。この秘密で栽培した草を売る仕事は彼女の役割か。やがて、終わりがくることはわかっている。 . . . 本文を読む
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『ブルーアワーにぶっ飛ばす』

2019-10-29 23:01:55 | 映画
  この不思議な手ざわりの映画に魅了された。箱崎優子監督のデビュー作。夏帆とシム・ウンギョンによるロードムービー。このふたりの掛け合いを見ているだけで楽しい。   東京でCMディレクターをしている女(夏帆)。才能があり、売れっ子みたいだ。だけど、常にイライラしている。クリエイティブな仕事をしているという自負がある。今ある現状に満足している、はず。でも、このままずっとやって . . . 本文を読む
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劇団きづがわ『あ・り・が・と』

2019-10-29 22:53:58 | 演劇
  障害を持つ子どもを抱えた家族を描くのだが、告発とかメッセージとかいうテーマが前面に出てくる芝居ではない。これはまず、ほんわかとしたある家族のお話になっている。あくまでも心温まるホームドラマなのだ。そこからスタートする。そこに終始する。だから素晴らしい。  終盤で、和田雅子演じる主人公の祖母が、過去を懺悔する重いシーンもあるが、そこにドラマの主張が集約されるのではなく、そ . . . 本文を読む
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劇団大阪『麦とクシャミ』

2019-10-29 21:52:33 | 演劇
  彼らは、今、目の前にあることをきちんとこなしていく。この作品は、自然の不条理と戦争という不条理を前にして為す術もない人々の姿を描いている。だが、そうであるにもかかわらず、この芝居の登場人物である彼らのたくましさは何だろうか。泣き言も言わず、ただ、為されるがままに生きていく。不貞不貞しいわけではない。無力だというわけでもない。現実を受け止め、そこでただ生きるだけだ。   . . . 本文を読む
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