障害を持つ子どもを抱えた家族を描くのだが、告発とかメッセージとかいうテーマが前面に出てくる芝居ではない。これはまず、ほんわかとしたある家族のお話になっている。あくまでも心温まるホームドラマなのだ。そこからスタートする。そこに終始する。だから素晴らしい。
終盤で、和田雅子演じる主人公の祖母が、過去を懺悔する重いシーンもあるが、そこにドラマの主張が集約されるのではなく、そんなエピソードも全体の中にきちんと収まる。
障害を持つ子どもを育て、周囲の偏見と闘い、自分の子どものことだけではなく、障害者の自立を目指して戦い続ける姿を描くささやかなホームドラマなのである。全体のバランスがとてもよく、重くもなく軽くもなく、コミカルなドラマとしてきちんと収まっていく。ただ、それがなんと30年に及ぶ大河ドラマなのである。同時に障害者に対する問題意識をきちんと追求している。
息子の少年時代からスタートして40代までを母親を中心にした家族の視点から描くというスタイルが上手く機能している。摑みのエピソード(ここは大人の息子)もいい。そこから一気に過去に戻り、お話が始まる。
主人公を演じた林田彩の大変な毎日をとても自然に乗り切っている姿がいい。彼女の無理をしているにもかかわらず,無理を感じさせない姿がこの芝居を象徴する。これは安易なヒューマニズムではなく、きちんと毎日を生きることで成し遂げられるリアルなのだ。そこからは未来に対する明るい展望が見えてくる。