この不思議な手ざわりの映画に魅了された。箱崎優子監督のデビュー作。夏帆とシム・ウンギョンによるロードムービー。このふたりの掛け合いを見ているだけで楽しい。
東京でCMディレクターをしている女(夏帆)。才能があり、売れっ子みたいだ。だけど、常にイライラしている。クリエイティブな仕事をしているという自負がある。今ある現状に満足している、はず。でも、このままずっとやっていけるわけではない、という不安を抱えている。自分が女であることをハンディに思っている。いや、女だから男には出来ない仕事が出来ると信じている。若くて綺麗で才能もある。
映画は彼女の日常のスケッチから始まる。やがて、唐突にロードムービーになる。彼女以上に不思議な友人(シム・ウンギョン)が登場して、ふたりで茨城に行く。彼女の実家に行き、入院している祖母のお見舞いをする。棄ててきたはずの故郷に久しぶりで帰ると、そこはやはり、帰りたくはない場所だった。ただ、それだけ。
こんなにも、特別なストーリーのない映画なのに、面白い。予想もつかないお話が、なんとなく、だらだら続くばかり。休みの日の2日間。思いつきで帰郷して(させられて)、嫌な思いをする。そんななんでもない時間をさりげなく切り取っただけ。それなのに、なんだか元気になれる。不思議な映画だ。