明野照葉さんの小説は初めてだ。彼女はミステリー作家のようだ。だから、今まで読んだことがなかったのか、と納得する。僕は基本的にミステリーとか、推理小説とかは読まない。時間の無駄だと思うからである。まぁ、人には向き不向きがある。それだけのことだ。今回これを手にしたのはなんだか面白そうな「家族小説」だったからだ。少なくともそう思えたからだ。でも、読み始めてしばらくすると、なんだかテンポが悪過ぎて大丈夫か、と心配になる。でも、大丈夫だ。よく考えて作られてある。
33歳のOLが(というか、最近OLなんていう言い方しないね)会社の合併吸収のためリストラの危機に遭遇。7年付き合う恋人とはなんだか、今更結婚なんてお互い言い出しにくい。でも、このままでは東京暮らしは不可能で、青梅の自宅に戻らなくてはならない。でも、あそこだけは嫌。東京都とはいえ、凄い田舎で、あそこから抜け出すため今まで頑張ってきたのだ。だが、その実家もしばらく行かない間に、わけのわからない(訳ありの)夫婦ものを居候させていて、不穏な感じだ。自分の生き残りを賭けて、でも表面的には家族のピンチを救うため、その海千山千の夫婦と戦うことになる。
結局、自分では何もしないで、追い詰められて初めて仕方なく行動に出る、というのが、ダメな人間の常であろう。この小説の主人公がそうで、彼女が忌み嫌う彼女の家族が彼女に輪を掛けてそうだ。これはそんなダメ人間たちが、それでも生きるために、なんとかしようとする姿が描かれるホームドラマだ。
震災以降の小説は、いずれもあの震災の影響を受ける。そこをスルーして日本を舞台にした小説は作れない、というのが実情だろう。これもそんな危機感を、あるいは危機管理の問題をベースにしながら、もう一度家族のあり方を見つめなおすというホームドラマとなっている。自分の家が嫌で高校卒業後、家を出て東京の(というか、彼女の住む町も一応東京の果てだが)大学に行き、就職したけれど、リストラによって、仕事を失い、あんなに嫌いだった実家に戻らざる得なくなる主人公と、更にはその周辺の人たちも含めた物語となる。みんな同じ穴の貉だ。誰が正しくて、誰が悪いとか、そんなことはわからない。そこが、作者のねらいである。
話の展開がおそろしくまどろっこしくて、イライラさせられるのだが、このウダウダしたところも、書き手の狙いなのかもしれない。いつまでも煮えきらないまま、不安を抱えながら、現状を受け入れ生きていこうとする家族の姿は、なぜか生き生きしている。わけのわからない夫婦と同居しながら、彼らに助けられ再生していくこの家族は、その夫婦が詐欺師で、自分たちがこれからどんな酷い目にあうか、わからないにも拘らず、この2人に頼るしかない。この微妙なバランス感覚を全編維持していく。居候夫婦に一切内面を語らせないのも、腹立たしいほど上手い。
そうすることで、そこから「何か」が見えてくる。だましあうのではなく、結局は助け合うこと、それがお互いの未来につながる、そんな話になる。ラストになっても詐欺師夫婦の実像は明確にならないのがいい。この2人の思惑なんて、ここではわからなくていいのだ。彼らを通して、変わっていく家族の側を見せることを作者は目的にした。正しい選択だ。
33歳のOLが(というか、最近OLなんていう言い方しないね)会社の合併吸収のためリストラの危機に遭遇。7年付き合う恋人とはなんだか、今更結婚なんてお互い言い出しにくい。でも、このままでは東京暮らしは不可能で、青梅の自宅に戻らなくてはならない。でも、あそこだけは嫌。東京都とはいえ、凄い田舎で、あそこから抜け出すため今まで頑張ってきたのだ。だが、その実家もしばらく行かない間に、わけのわからない(訳ありの)夫婦ものを居候させていて、不穏な感じだ。自分の生き残りを賭けて、でも表面的には家族のピンチを救うため、その海千山千の夫婦と戦うことになる。
結局、自分では何もしないで、追い詰められて初めて仕方なく行動に出る、というのが、ダメな人間の常であろう。この小説の主人公がそうで、彼女が忌み嫌う彼女の家族が彼女に輪を掛けてそうだ。これはそんなダメ人間たちが、それでも生きるために、なんとかしようとする姿が描かれるホームドラマだ。
震災以降の小説は、いずれもあの震災の影響を受ける。そこをスルーして日本を舞台にした小説は作れない、というのが実情だろう。これもそんな危機感を、あるいは危機管理の問題をベースにしながら、もう一度家族のあり方を見つめなおすというホームドラマとなっている。自分の家が嫌で高校卒業後、家を出て東京の(というか、彼女の住む町も一応東京の果てだが)大学に行き、就職したけれど、リストラによって、仕事を失い、あんなに嫌いだった実家に戻らざる得なくなる主人公と、更にはその周辺の人たちも含めた物語となる。みんな同じ穴の貉だ。誰が正しくて、誰が悪いとか、そんなことはわからない。そこが、作者のねらいである。
話の展開がおそろしくまどろっこしくて、イライラさせられるのだが、このウダウダしたところも、書き手の狙いなのかもしれない。いつまでも煮えきらないまま、不安を抱えながら、現状を受け入れ生きていこうとする家族の姿は、なぜか生き生きしている。わけのわからない夫婦と同居しながら、彼らに助けられ再生していくこの家族は、その夫婦が詐欺師で、自分たちがこれからどんな酷い目にあうか、わからないにも拘らず、この2人に頼るしかない。この微妙なバランス感覚を全編維持していく。居候夫婦に一切内面を語らせないのも、腹立たしいほど上手い。
そうすることで、そこから「何か」が見えてくる。だましあうのではなく、結局は助け合うこと、それがお互いの未来につながる、そんな話になる。ラストになっても詐欺師夫婦の実像は明確にならないのがいい。この2人の思惑なんて、ここではわからなくていいのだ。彼らを通して、変わっていく家族の側を見せることを作者は目的にした。正しい選択だ。