とても美しい舞台だった。作品自体に力があるし、それを30名に及ぶキャストが一丸となり圧倒的な迫力で見せる。きちんと作り込まれた舞台美術だけではなく、大人数のキャストを適所に配置しての群舞とでもいうべき空間造形の見事さ、特にラストシーンの美しさは圧巻だった。人魚(金魚)の口の中から出てくる赤い糸をどんどん引き延ばしていくシーンの美しさは感動的だった。
まだ幼い高校生の女の子たちが、こんなにも難しい作品に挑む。みんなで協力してこの劇世界を作り上げる。いつものことだが、特定の誰かが中心となり、そのカリスマ性で作品が作られていくのではない。アンサンブルプレーでそれを成し遂げていく。総演出の山本篤先生の熱い想いが子どもたちに憑依して、1人1人のがんばりがこの壮大なロマンを紡ぎ上げていく。
ただ、この作品がどれだけ子どもたちに届いたかは心許ない。彼女たちがちゃんと理解して演じたのかというとそこにも少し疑問を感じる。この作品が今の子どもたちの気持ちを代弁しているとは思えない。だが、そんなこと、気にしなくてもいいのかも知れない。このわけのわからない熱い塊を受け止め、受け入れ、表現していく過程で、ここにある大切なものは確実に彼女たちに伝わり、それは確かに舞台に反映されていく。
理不尽な格差社会の中で、誰もが生きづらさを感じて、もがき苦しみながら生きている。そんな今の時代を背景にして、この芝居は、幻のユートピアの崩壊を通して、この物語の大家族がここから旅立つまでを描く。ここではない、どこかへと、そんな旅立ちの感動は共感を呼ぶ。