46回すばる文学賞受賞作品。なんでもない話なのに、魂を揺さぶられる。いや、そんな大袈裟なことではない。あまりにさりげなくて心が震える。ふたりの女性が同居して暮らす日々のスケッチだ。42歳と38歳。結婚はしないだろう。もう諦めた。いや、最初から男には興味がない。怖くて。同性愛ではない。趣味があう(同じアイドルグループの熱烈なファン同士)気の置けないふたりだ。お互い恋人が出来たらルームシェアを解消していいと思っている。一緒だから楽。だから今はこうしている。そんな淡い関係。
だから、寂しい。未来はない。将来の展望も。この先どうなるのか、わからない。今が楽しければそれだけでいいなんて言えるほど子どもじゃない。この空虚な心を埋めることはできない。すばる掲載時の最初のタイトルは『空洞を抱く』だったけど、単行本化する段階で『がらんどう』に変更したみたいだ。わかりやすい。でも、この変更であまり変化はない。必要はないし。
ラスト、空っぽの想いを抱えて立ち竦む。空っぽの赤ん坊の出来損ないの人形を抱えて。100ページほどの短い小説だが、この微妙な長さがいい。これ以上になると作られたお話になる可能性がある。お話はここまで突き刺さらない。ハッとさえられるこの短さがいい。でも、短編小説ではない。短編ではすぐに消えてしまうし、忘れ去られる。この分量だから1冊の小説を読んだという満足感がある。