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映画・演劇のレビュー

『群山』

2024-02-13 06:20:00 | 映画

『柳川』のチャン・リュル監督の2018年作品。この後彼は『福岡』『柳川』と3部作を連作する。これは『柳川』とよく似た作品でこの3部作はいづれもこのスタイルなのか。(『福岡』も早く見たい)

ふたりは群山の町に着き、駅前の地図を見る。そして古い町をふらふらと歩き出す。一軒の食堂で食べる。店のおばさんから近所にある民泊を尋ねる。しばらくこの町で過ごすことにするみたいだ。

だから映画の前半はこの町で過ごす時間が描かれる。民泊する家と小さな町をふらふらする描写を淡々と追いながらまるで全貌が見えない。これは何の為に作る映画なのか。

後半、いきなりソウルに帰る。さらにはふたりが何故群山に行くことになったのか、が描かれる。そこは映画が始まって既に1時間30分くらいのところで、ようやく映画のタイトルである『群山』と出る。

そのタイトルシーンの後からスタートして残り30分。映画のラストシーンは冒頭につながる。のかもしれない。(ぼんやり見ていたから詳細はわからないけど。配信で見てるから確認は簡単だが、今はしない)

説明せずに話は進み、いきなり終わり、始まる。人がほとんどいない廃墟のような町として描かれる群山は『柳川』で描かれた柳川の町と似ている。そこは閑散としていて誰もいない。静かだ。

ここは10年前に亡くなった母親の暮らしていた町。街頭で募金箱を手にして「朝鮮族に人権を与えよ!」と訴える男に「あなたは朝鮮族なのか?」と詰め寄る。自分の祖父が満州に留まっていたら、自分もまた朝鮮族のレッテルを貼られていた。民族って何だろうか。日本の建物がたくさん残っているこの町の歴史的背景も含めて、我々のルーツと未来はどこにあるのか。これは日本と韓国(いや、朝鮮)を描く連作の始発点である。群山を旅することで、自分は何者なのかを求める。そんな旅は福岡につながる。



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