習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『僕らのワンダフルデイズ』

2009-10-21 22:32:33 | 映画
 竹中直人主演映画って久しぶりではないか。彼のようにアクの強い役者は主演としてはなかなか使いにくいはずだ。結局自分が作る映画でしか主演は出来ないなんてことにもなりかねない。最近のビートたけしも同じだろう。

 今回の彼の役は、50代のオヤジ。自分がガンだと思い、死ぬ前に自分が本当にやりたいことをやってから死のうとする話。彼はもう一度バンドをしたい、と思う。しかも高校時代の仲間と再結成して、である。53歳という年齢設定はおもしろい。今までこういう中途半端な世代を主人公にした映画はなかった。仕事が忙しく、しかも今更いくらなんでもバンドなんかできないと思っていた面々が、彼に動かされて気がつけば夢中になっていくといういかにもなお話だ。

 悪い映画だとは言わないが、こういうホームドラマはもう今の日本映画から失われた。商売にならないし、映画の作りもユル過ぎてかったるい。プログラムピクチャーが崩壊し、消えてしまった類の映画である。懐かしいといえば懐かしいが、今更こんなどうでもいい映画を見ても心動かされない。現行の映画興行においてこういう作品は絶対に商売にはならない。なのに、なぜ作られたのか。不思議だ。昔なら2本立で松竹とかが作って2週間くらい上映していたタイプの映画である。

 ここには何も語ることはない。久々に竹中直人のパフォーマンスを映画で見た。それぐらいだ。5人の男たちのそれぞれのドラマがリアルに語られるのなら興味深いのだが、ただのルーティンワークでは見てる方を本気にさせない。高校時代の彼らが夢見たものが、この35年間でどう変貌したのか、50代の後半を間もなく迎えることに対して何を思うのか。描くべきことならいくらでもあるはずなのに、ただのコメディータッチの毒にも薬にもならない映画にしかしない。

 監督はTVのディレクターである星田良子。脚本も西村沙月という女性ライターのオリジナルらしい。いかにもTV的な安直さ。なぜ竹中直人がこの企画に乗ったのだろうか、不思議だ。もう少し骨のある映画だと期待したのにがっかりさせられた。

 

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