『東京バンドワゴン』シリーズのスピン・オフ。時代は遡って、戦後すぐの風景の中、勘一のもとにサチがやってきた顛末が描かれていく。このシリーズの誕生編とでもいうべき作品。この不思議な古本屋の様々な謎が解き明かされるファン垂涎の一篇。
この『東京バンドワゴン ビギンズ』は幾分本編とはタッチを異にしている。なんと国家存亡の機密文書を巡るお話なのだ。(とは言えこれは本編にも描かれていた事件なのだが)だが、基本には忠実で、いつものようにこの店に様々な人たちが集まってきてなんだかんだと楽しげに過ごす日々が描かれていく。ほんとにこれは変わらない。それはいつものことなのだ。
華族の令嬢だったサチがここで匿われていくうちに、このなんともいいようのない心地よい場所の虜になっていくさまが、ほのぼのとしたタッチで描かれる。ホームドラマというものの良さを十二分に生かしたドラマ展開はいつもながら素晴らしい。いつまでもここにいてのんびり過ごしていたくなる。そんな幸せな気分にさせられる。
ただし、お話自身は事件物のスタイルにもなっているし、実際に「東京バンドワゴン」のメンバー(家族)がバンド活動をしたりもするのはご愛敬。サチの両親の所在を確認するためバンドを装って忍び込むとか、ラストではGHQの大物を相手にまわして大芝居を打つとか、けっこう派手な話になっている。
10月はこのブログで紹介した以外にもけっこうたくさん本を読んでいる。文学界新人賞を受賞したシリン・ネザマフィー『白い紙、サラン』や、笹生陽子の『世界がぼくを笑っても』そして、星野道夫の『CARIBOU 極北の旅人』の3冊はいずれもおもしろかった。
この『東京バンドワゴン ビギンズ』は幾分本編とはタッチを異にしている。なんと国家存亡の機密文書を巡るお話なのだ。(とは言えこれは本編にも描かれていた事件なのだが)だが、基本には忠実で、いつものようにこの店に様々な人たちが集まってきてなんだかんだと楽しげに過ごす日々が描かれていく。ほんとにこれは変わらない。それはいつものことなのだ。
華族の令嬢だったサチがここで匿われていくうちに、このなんともいいようのない心地よい場所の虜になっていくさまが、ほのぼのとしたタッチで描かれる。ホームドラマというものの良さを十二分に生かしたドラマ展開はいつもながら素晴らしい。いつまでもここにいてのんびり過ごしていたくなる。そんな幸せな気分にさせられる。
ただし、お話自身は事件物のスタイルにもなっているし、実際に「東京バンドワゴン」のメンバー(家族)がバンド活動をしたりもするのはご愛敬。サチの両親の所在を確認するためバンドを装って忍び込むとか、ラストではGHQの大物を相手にまわして大芝居を打つとか、けっこう派手な話になっている。
10月はこのブログで紹介した以外にもけっこうたくさん本を読んでいる。文学界新人賞を受賞したシリン・ネザマフィー『白い紙、サラン』や、笹生陽子の『世界がぼくを笑っても』そして、星野道夫の『CARIBOU 極北の旅人』の3冊はいずれもおもしろかった。