6つの短編集。身体の6つの器官をテーマにして紡がれたそれぞれのエピソードは、前半の3篇は過去の時間。後半の3篇は現代を舞台にする。目から始まり、口、顔、歯、耳、そして鼻。特別、これ見よがしに怖がらせようなんてしていない。ホラーと呼ぶのも憚られるくらいに静かなタッチで描かれる。
グロテスクな描写は必然性があるものだけに留め、扇情的なものは一切なく、しっかりと抑えたタッチが貫かれてある。不思議な現象も、ひとつの事実として、提示されるだけで、それを使って荒唐無稽なものを見せるわけではない。そんな気はさらさらないようだ。
ストーリーの仕掛けではなく、きちんとした状況描写を積み重ね見せていこうとしているのがいい。安直な場面はない。冷静に不思議な状況、出来事を捉えていく。表題作の『夏光』なんて、ただひたすら疎開先での、リアルな日常描写を淡々と見せていくだけである。忌み嫌わているスナメリという魚を巡るエピソードも、呪われた子供と主人公との交流も、日常描写の中にしっかり納まっているから、物語が殊更前面に出てこない。孤独な少年のいつまでも続く日々が、読み手の胸に迫る。母親を請う物語はラストの出奔に自然に繋がる。衝撃のラストも、あまりにさらりと流すので、もしかしたら気が付かない人もいるのではないか、なんて思わせるくらいだ。(あの日の広島に向かうことなんて、まぁ、何も言わなくても、それだけで充分だろうが。)
出来事の結果を敢えてひつこく言わずにおく。その事実すら日々の生活の中に溶け込ませるくらいの勢いで見せるのだ。だから、話の仕掛けが単純なのも気にならない。それどころか、このくらい簡単に入れるから、さりげなさ過ぎてそこが、反対に目立ってしまうくらいだ。
一番怖いのは、ひたすら食べ続ける金魚を描く『は』。作品の完成度では先に書いた『夏光』であろう。最終話のカンボジアから臓器売買のために売られてきた少女の話も忘れがたい。
グロテスクな描写は必然性があるものだけに留め、扇情的なものは一切なく、しっかりと抑えたタッチが貫かれてある。不思議な現象も、ひとつの事実として、提示されるだけで、それを使って荒唐無稽なものを見せるわけではない。そんな気はさらさらないようだ。
ストーリーの仕掛けではなく、きちんとした状況描写を積み重ね見せていこうとしているのがいい。安直な場面はない。冷静に不思議な状況、出来事を捉えていく。表題作の『夏光』なんて、ただひたすら疎開先での、リアルな日常描写を淡々と見せていくだけである。忌み嫌わているスナメリという魚を巡るエピソードも、呪われた子供と主人公との交流も、日常描写の中にしっかり納まっているから、物語が殊更前面に出てこない。孤独な少年のいつまでも続く日々が、読み手の胸に迫る。母親を請う物語はラストの出奔に自然に繋がる。衝撃のラストも、あまりにさらりと流すので、もしかしたら気が付かない人もいるのではないか、なんて思わせるくらいだ。(あの日の広島に向かうことなんて、まぁ、何も言わなくても、それだけで充分だろうが。)
出来事の結果を敢えてひつこく言わずにおく。その事実すら日々の生活の中に溶け込ませるくらいの勢いで見せるのだ。だから、話の仕掛けが単純なのも気にならない。それどころか、このくらい簡単に入れるから、さりげなさ過ぎてそこが、反対に目立ってしまうくらいだ。
一番怖いのは、ひたすら食べ続ける金魚を描く『は』。作品の完成度では先に書いた『夏光』であろう。最終話のカンボジアから臓器売買のために売られてきた少女の話も忘れがたい。