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映画・演劇のレビュー

『おもちゃ映画で見た日中戦争』

2022-03-16 14:21:16 | 映画

大阪アジアン映画祭の1作。これは一応ドキュメンタリー映画という分類でいいのかもしれないけど、それにしても映画としてはあんまりだ。おもちゃ映画という不思議なものが昔あったらしい。そんなフィルムをかき集めて1篇の映画作品を作った。時系列に並べて、そこから垣間見える日中戦争への道。それがどんなふうに浮かび上がってくるのかには興味があった。庶民に提示された個人向けのおもちゃとしての映画。そんな家庭で見るための映画フィルムが販売され、手回し映写機で見ていた。その事実がなんだかそれだけで凄いと思える。だからこそ、これが映画ならその事実を通して何が見えてくるのかを描いて欲しい。

貴重な「おもちゃ映画」をかき集め1本の長編映画にして上映しする。埋もれていたフィルムの断片、そこに描かれた「嘘」と「真実」。それを通して何が見えてくるのか。当時の人々が何を見ていたのか。そこからは今まで見てきたものとは一味違う時代があぶりだされてくるといいなぁ、と思った、のだが。とても残念だ。

そこにはどこにでもあるような記録映像があるだけで、がっかりした。見ているうちに、その単調な構成ゆえ、しだいにうんざりさせられた。歴史の背景には庶民がいる。ここに偶然映り込んだ人々がいる。そこから何を描くか。これらの映像を人々はどんなふうに受け止めたか。そんな庶民の姿はこの映画にはなく、定番の大きな歴史のうねりがナレーションで綴られていくばかりだ。でも、それはみんな知っていることだし。このフィルムにしか語れないものがそこになくては見る意味はない。これは確かに貴重な記録なのかもしれないけど、映画としてこれを見ようとしたなら、不満が残る。こんなのは映画ではない、と言うしかない気がする。


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