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映画・演劇のレビュー

『ダンスの時間 17』

2007-10-21 10:07:15 | 演劇
 ロクソドンタというスペースは、そこそこ広いのに、客席が迫っているために、ダンサーたちの息遣いまでもが、伝わってくるのがいい。『ダンスの時間』は批評家の上念省三さんが、自分の目でセレクトしたダンサーたちを、彼自身の紹介のもと、それぞれのパフォ-マンスを見せていくという企画だ。

 このあくまでも個人的な、というところがいい。上念さんの演者に気を使ったインターミションがいつも素敵で、それぞれのパフォーマーについて彼がどんなふうに話してくれるのかも楽しみの一つになっている。個人的なセレクトであるが、同時にとても信頼できる批評家がしっかりした目で選んだグループであり、この小さな作品のショーケースを通して、今のダンス・シーンの一つのあり方が見えてくる。

 今日は3団体。(2日日替わりなので今回は、6団体だが) BeeElephant『そう』は、男女2人(ゆいまお、友廣満)のユニット。少しギクシャクしたすれ違い。2人が一緒に動く。しかし、微妙に「ずれ」が出来る。その落差がおかしい。器械体操をするシーンがとてもいい。キレイではない。わざとぎこちない動きになっていく。その危うさがとてもコミカルで、真剣であればあるほど面白い。2人のコミュニケーションの在り方の問題がこの短い作品ではしっかり描かれている。体を支えあう2人の呼吸が、きちんと合わない。そんなずれをなんとか修正していこうとする。もちろんこういうパフォーマンスをわざとやっているのだが、見ていてわざとらしさがなく、そのぎこちなさが、微笑ましい。温かみのあるダンス・パフォーマンスに思わず顔がほころぶ。

 原和代さんのソロ『ライオンに鏡』は3部構成。まず音のない中で始まる。彼女の立ち姿がいい。特に2場で、背中を向け、何もしないで遠くをしっかり見つめる長いシーンが素晴らしい。彼女の目線の先に一体何があるのか、思わずそちらを見てしまいそうになる。それくらい力強い視線なのだ。第3場では、明かりをほとんど落とした中、闇の向こうに目を凝らしていく。静かに、闇の奥へと吸い込まれていくラスト・シーンは美しい。前半の激しい動きから一転する。この対比が効果的だ。メリハリのしっかりした作品で、ダンス作品とはこうあるべきだ、と思わされる。

 最後は、再び男女2人組。ダンスユニット0九(藤井雅、平野見由紀)の『モザイク』。こちらは2人の絶望的な距離感がベースに描かれてあり、いささかオーソドックスな作品。離れた男女が、同じように空を見上げたり、倒れたり、よく似た動きを繰り返していきながら、気付くと彼らのシンクロしていくダンスに引き込まれていくことになる。ただ、彼らのロジックと表現はあまりに、当たり前すぎて、驚きはない。

 以上3本。1時間ほどの短い時間。でもとても刺激的な時間だった。

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