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映画・演劇のレビュー

有川浩『旅猫レポート』

2013-03-23 22:44:10 | その他
 何が必要なのか、しっかり考えてみよう。この小説のラスト、涙が溢れて止まらなかった。こんな素直な気持ちで泣けるのって、久しぶりのことだ。猫のナナと共に、この小説の主人公であるサトルの生きてきた人生をたどることで、それが見つかる。

 この小説を読む直前にも同じような猫好きが主人公の『世界から猫が消えたなら』(川村元気)を読んでいたから(これはあまりおもしろくない。)たまたま2冊連続で「猫もの」小説ということになった。実に不思議な連鎖になっている。(僕は別に猫好きというわけではないのにこんなこととなった。大体生き物が苦手で、ペットを飼うなんてとんでもない。なのに、我が家はイグアナを飼っているのだが)先日は『レンタネコ』を見たし、どうしてこんなにも猫が続くのか?

 サトルが死ぬということが、わかったところから、もう完全にこの小説の世界観にノックアウトされた。この小説は、ただの旅をテーマにして猫と人とのふれあいを描くものではなかったからだ。さらにはサトルの生い立ちを知り、いろんなことがクリアになったところから、もうずっと泣き続けることになる。自分の今いる状況に心から感謝しよう。こうして幸せに生きていることの有難さ。でも、そんなことにも気付かない。

 子猫のナナとサトルの4つの旅。小学校時代。中学時代、そして高校時代。3つの時代のサトルと彼が出会った友だち。彼らの視点から描かれるそれぞれの時代のサトル。そして、今、ナナの飼い主を求めて、彼らのもとに行き、再会する。最後は今までサトルを育ててくれた叔母さんのもとへの旅だ。

 何が大切で、何を守るのか。人が生きていく上で、必要なものが、何なのかをこの小説はちゃんと教えてくれる。

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