実は先週に見ていたのだけど、恥ずかしいから見たことを隠していた映画だ。よくあるマンガの映画化(すでに映画化もされた『デトロイト・メタル・シティ』の若杉公徳が手がけたギャグ漫画)で、バカバカしい設定の「ヒーローもの」である。何度となく予告編を映画館で見ていて、こんなアホな映画を作るってすごいし、この映画に出る役者たちもすごいと思った。主演の伊藤英明を始めとして、大貫勇輔、山本耕史、小澤征悦が時代錯誤のヒーローを演じる。彼らの力でマーベルの向こうを張る日本映画の底力を見せろ!なんて一瞬思う。
そして古田新太! この人は新感線のキャラそのままでヒーローたちの師匠を演じる。(ついでに、同じく新感線のヒーロー橋本じゅんも出ている!)これはいったいどこまでバカなのか。バカを極める映画になっていたならそれはそれで凄いではないか、とほんの少しの期待までした。監督はプロデューサーとしてこれまで数々の映画に関わってきた平野隆。これは彼のデビュー作である。脚本は『翔んで埼玉』の徳永友一が担当した。
で、映画は壊滅的な酷さだ。真面目にとことんバカをやっているのに、すぐに飽きさせられる。5分で飽きる。予告編は2分弱だから笑えたけど映画は2時間だ。もう残り1時間50分ほどは修行である。こんなことなら監督はいのうえひでのりに任せて好き放題させていたらよかったのではないか。彼ならギャグ満載で、本物のバカをしてくれたはずだ。
何が悪いかというと、(すべてがダメだが)アクション映画なのにまるでアクションに驚きがない! いや、これは純愛映画なのだ、と言われたら返す言葉はないけど、これを「純愛だ!」と本気で描く覚悟も感じられない。伊藤演じる男は一途に彼女(上白石萌歌)のことを想い、邁進する。でも、笑えない。彼の本気が見えてこないからだ。伊藤の相手役ならもっと大人の女性を持ってきたほうがよかったのではないか。(まぁ、それなら原作と違う展開になるのだろうが)
この映画がダメな理由2点目はそこにある。原作そのままを目指しすぎて、映画としての面白さがまるで感じられなかったのだ。映画はエンドクレジットでも流れる原作の漫画のコマの忠実な再現である。そんなことには何の意味もない。ここで映画と漫画では流れる時間が違うという事すら理解していない作り手のミスは明白になる。原作のファンはこの映画を見てもきっと何の発見もない。これ以外にも数々のダメなところがあるけど、最大の欠陥は以上2点に尽きるのでこの項は終了。