あこがれの広告業界に入った新入社員の奮闘記。レトルト内閣お得意のオフィスもの。一流企業に入社してバリバリ働くつもりだったのに、小さな広告会社に、コネ入社(叔父が社長)しかできなかった主人公が、それでも頑張って戦う姿を描く。
軽いタッチでテンポよく生演奏の音楽とともにある種のパターンから一歩も出ないお話が展開していく。今回は音楽の比重が大きく、ドラマ部分は弱くてもいい、というバランス感覚で見せていく。ありきたりなストーリーをなぞりながら、でも、それがなんだか心地よいのは気持ちのいい音楽に乗せられて、安心して芝居を見ていられるからだろう。
それだけに、このお話のラストをどこにもっていくのだろうか、興味津々で見ていたのだが、盆踊りのシーンから一気にコンペのプレゼン現場へと移行して、決着をはっきりさせないまま、終わるという大胆なエンディング。勝ち負けの軍配を描く必要なんかなし、という判断も大胆というか、潔いというか。
軽やかさを前面に打ち出し、最初は新入社員がひとりで戦い、気づけば、それをみんなが支えるというこの種のドラマの王道を行く。芝居自身もそんなお祭りを演出していく。祭りだから勝ち負けなんか関係ない。そんな感じ。とてもすがすがしい。今自分の目の前にある仕事に全力を傾ける。それだけでいいし、それが大事なこと。そんな当たり前をしっかりとみせてくれる。