今回は「羊」。毎回いろんな動物がモチーフになる。眠れない男のお話。それと、スパイの話。ふたつの話が同時進行してラストに至る。いつものようにたわいもない話なのだ。でも、だから、いい。
105分間、バカバカしいお話で楽しませてくれる。これもいつものようにだが、ニランジャンとそのダンスチームによるダンスシーンも満載で、狭い空間を縦横に使い、このくだらないお話を盛り上げて楽しませる。魔人ハンターミツルギさんは、ただ淡々とどこにたどり着くかはわからない、(というか、どこにたどり着こうと構わない)ゆるゆるのお話をのんびりと見せていく。ただそれだけに全力を注ぐ。
機密文書が盗まれた。(ヤギに食べられた?)それを取り戻すミッションを受けた尾松由紀が、いつものようにやる気なさそうに、事件の解決に向けて奮闘する。眠れない谷屋俊輔を寝付かせるために羊たちが奮闘する。一応どちらも奮闘しているようなのだが、空回りしたり、無気力そうだったりで、テンションが上がったり、下がったり。
もちろん、そういうことも含めて、ねらい通りなのだ。時代の気分も匂わせながら、ミツルギさんは、いつものようにポーカー・フェイスで、芝居のはじっこにいる。静かにこの世界を見守っている。ことさら笑いを強要したりしない。笑いたかったら笑っていいよ、というくらいのさりげなさだ。スタイルの固定が作品を安定させるだけではなく、その可能性を広げていく。