人が生まれ、死ぬ。今まで、人生なんてものを振り返ることなんて、なかった。しかも、終わりというところから、見つめることはなかった。しかし、この芝居を見ながら、人生を死から見つめることが、なんとも自然なこととして、伝わってきた気がした。60年はひと回りで、ひとつの区切りだと、近頃とみに思う。キタモトさんもきっと60歳を目前にして、思うところがあったのではないか、なんて、そんなことを思う作品である。
今まではいつも前を向いていた。それはまだ若かったからだ。だけど、気付けば、知らない間に年老いていた。最近、自分が明らかに老人の目で、ものごとを見るようになっている。そんなことを考えながら、この芝居を見た。
理屈で、この作品を見てもつまらない。ここには理に落ちないことばかりが連なっている。当然1本のストーリーが貫いているわけではないし、お話には整合性はない。死の直前に見た幻として、納得するのはナンセンスだし、つまらない。思いつくまま断片的なイメージを綴った、というわけでもない。これはもっと自由なのだ。
蟻の目で、世界を見る。ビスケットを運ぶシーンが何度となく描かれる。彼らは何のために食べ物を運ぶのか。そんなことわかりきっている。生きるためだ。しかし、人間はそんなふうに簡単に答えを出そうとはしない。いくつもの瞬間、何を思い、何を考え、行動したか。自分でもわからない。
ゼロ戦に乗って、死に行くことも、恋人を刺して、殺してしまうことも、さらには、殺したことすら忘れ、記憶すらないことも。不条理ではなく、当然のことなのだ。ただ、森の中を逃げ惑う。
人は自分で自分がわからない。わからないまま、生きて、死んでいく。たった80分の芝居(遊劇体史上最短の上演時間)の中で、生と死を描き切る。いや、描き切れないもどかしさこそが、この作品の身上だ。
白で統一された衣装と舞台空間も潔い。無を基調にして、すべてを表現する。僕はまだ死ぬわけではないけど、今まで生きてきて楽しかったと思う。そんなことを改めて思わせてくれるような、これはそんな作品なのだ。
今まではいつも前を向いていた。それはまだ若かったからだ。だけど、気付けば、知らない間に年老いていた。最近、自分が明らかに老人の目で、ものごとを見るようになっている。そんなことを考えながら、この芝居を見た。
理屈で、この作品を見てもつまらない。ここには理に落ちないことばかりが連なっている。当然1本のストーリーが貫いているわけではないし、お話には整合性はない。死の直前に見た幻として、納得するのはナンセンスだし、つまらない。思いつくまま断片的なイメージを綴った、というわけでもない。これはもっと自由なのだ。
蟻の目で、世界を見る。ビスケットを運ぶシーンが何度となく描かれる。彼らは何のために食べ物を運ぶのか。そんなことわかりきっている。生きるためだ。しかし、人間はそんなふうに簡単に答えを出そうとはしない。いくつもの瞬間、何を思い、何を考え、行動したか。自分でもわからない。
ゼロ戦に乗って、死に行くことも、恋人を刺して、殺してしまうことも、さらには、殺したことすら忘れ、記憶すらないことも。不条理ではなく、当然のことなのだ。ただ、森の中を逃げ惑う。
人は自分で自分がわからない。わからないまま、生きて、死んでいく。たった80分の芝居(遊劇体史上最短の上演時間)の中で、生と死を描き切る。いや、描き切れないもどかしさこそが、この作品の身上だ。
白で統一された衣装と舞台空間も潔い。無を基調にして、すべてを表現する。僕はまだ死ぬわけではないけど、今まで生きてきて楽しかったと思う。そんなことを改めて思わせてくれるような、これはそんな作品なのだ。