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映画・演劇のレビュー

工藤純子『ルール!』

2023-12-31 03:18:00 | その他

読んでいて胸が熱くなった。クライマックスの中学生の主張の場面だ。体育館で全校生徒や先生たち、保護者の前で自分たちの想いを彼女は話す。学校の理不尽なルールについて。生徒を抑えつける教師に向けた反抗ではない。自分たちの正直な気持ちを込めて伝える為に訴える。その素直な想いが胸に沁みる。

あの頃、僕たちはとても不自由だった。僕は中学生が嫌いだ。中学生が、というよりたぶん中学時代が、である。大人でもなく子供でもない中途半端な時代。自由がないこと。
 
だから僕は敢えて教職免許を取得する時、高校だけにした。同時取得できるのに中学は拒否した。高校が好きだった。自由に自分がしたいことができたから。そんな高校生を応援したいから。やるべき仕事はそれしかない。高校に戻って不安を抱えたあの日の僕のような高校生の後押しをする。そんな想いを抱いて22歳の春は始まった。あの日から40数年後の今、少し大袈裟だがこの本を読んであの頃の憂鬱の正体がわかった気がする。
 
この年末にこれで3冊目になる。少し意図的に読んでいた。小学生を主人公にした本(小手鞠るい『お金たちの愛と冒険』)、高校生を主人公にした本(清水晴木『17歳のビオトープ』)そして中学生を主人公にしたこの本、と連続しての3冊。
 
背景には来月からしばらく引退したはずだったのにまた高校に行くことになったことがある。頼まれて3ヶ月のショートリリーフをすることになった。そのことの詳細はここには書かない。それよりもこの本の話だ。
 
文芸部の面々は生徒会と協力して、校則と向き合う。子供だからと抑えつける教師に向けた刃は大人たちを射抜く。つまらない大人になって、ダメな教師になった大人に反省を促す。凄い事になる。
 
僕は中学生だった時、気が弱くて大人のいいなりだった。高校生になっても同じだった。ただ高校には仲間がいて、僕を信じて後押ししてくれた。ダメな先生もいたけど、素敵な先生もいた。だから生徒を信頼してちゃんと援護ができるような先生に自分がなりたいと思った。たぶん。そんな人がいて欲しかったからだ。出来たかどうだかはよくわからないけど、自分なりには頑張ったし、何より楽しかった。
 
この本を読んで、「中学でもよかったかもしれない、」なんて思った。高校生なら出来て中学生には無理、なんてことはない。それから、微力ながらこの子たちの応援をする松島先生の姿に自分を重ねてしまった。笑える。
 
 

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