フィル・ティペットがなんと30年の歳月をかけて作ったという執念の一作。ストップモーションパペットアニメの金字塔。凄い造形だ。『デル・トロのピノッキオ』と前後して見たのでついつい比較してしまうけど、どちらも凄まじい。ふたりの方向性はまるで違うけど凄いものを作ったという意味では双璧をなすのではないか。ただこれは『ピノッキオ』とは違い何が何だか訳がわからない映画で、唖然とするしかないような代物だ。84分の壮絶な地獄巡り。
地下世界に降り立つハンター。彼の前に次々と現れるモンスターを倒して倒して蹴散らしていく。問答無用の殺戮ショー。彼は何のため、どこに向かうのか、何が何だかわからない。しかもセリフはない。ストーリーもない。だから途中から少し退屈してくるけど、壮絶なビジュアルのオンパレードなので、ついつい見入ってしまう。だけど、正直言うと同じタイプのストップモーションパペットアニメ作品『ジャンクヘッド』には及ばない。ここにはまるで余白がないからだ。あるのは狂気だけ。それしかない。
せめてある種のストーリーが欲しい。お話は思い付きの域を出ない。壮大なスケールの寓話なのだろうが、これではあまりに無茶苦茶で何をよりどころにすればいいのかわからない。終盤『2001年宇宙の旅』のような描写も登場するけど、同じように訳がわからない映画だけれど、当然あの衝撃には及ばない。
描写はあまりに残酷でえげつなく見ていてうんざりさせられる。そんなとんでもない地獄をこれでもか、これでもかと延々見せきろうとした。環境汚染や強制労働、核戦争、残虐極まりない描写の連打。それがどこに行き着くのか。興味深いし題材としては悪くない。だが、ここには緩急というものがないのがつらい。確かに凄い映画だし狂気の沙汰だということはわかるけど、それだけではなんともいいようがない。