感情的な芝居で、その感情がガンガン表に出てきて、ドンドンぶつかり合う。あまりに激しすぎてひいてしまうくらいだ。オリジナルであるiakuの舞台とはまるでタッチの違う作品になった。同じ台本なのにこんなにも肌合いの違うものになるんだ、と驚きを通り越して衝撃的。
抑えたタッチの渋い作品だった上田一軒演出作品とは、まるで違う樋口演出に戸惑いながら、でも、だんだんそこに引き込まれていく。力でグイグイ押し切るダイナミックな芝居で呆れるくらいに大胆。
トイレから出ている2本の紐。それにつながれているふたりの女。姉と妹。このトイレで死んだ母親。あからさまに母と子供たちをつなぐ。彼女たちはもうここにはいない母親の体とつながったまま。こういう象徴的な仕掛けを随所に取り込み、感情と感情がぶつかり合い、軋み砕ける。
女2人だけではなく、男たちも自分の気持ちをどんどんぶつけてくる。こんなオーバーアクトをして、大丈夫かと心配になる。でも樋口さんは情け容赦ない。最初有北さんの芝居に違和感を抱いた。やりすぎだ。だが、途中から全員が彼に負けない状態になり、終盤には彼は上手で何もできない状態になる。(せりふもないからだけど)
ストーリーのめちゃくちゃさが気にならなくなる。もともと無理のある話なのだが、それをじっくりと丁寧に見せていくことでリアルを獲得していたオリジナル版とは全く別のベクトルに向かう作品に仕上がった。なんとも不思議で力強い作品になってしまった。(というか、横山さんの台本自体はそれほどめちゃくちゃな話ではないはずなのだが。)