4人の俳人を主人公にして、彼女たちのそれぞれの生き方を並行して描く。4人が、こんなにも関わり合わないまま、ラストを迎えるなんて意外だった。4人の話は別々の話で、これは結果的にオムニバススタイルの芝居となっている。
俳人として、女として、同時代を生きた彼女たちのそれぞれの戦いがじっくりと綴られる。ドラマチックな展開も、そんな見せ方もしない。ただ目の前の出来事をさらりと綴る。基本ふたり芝居。舞台の前面となる庭とその後ろになる部屋の2箇所で交互に話は展開する。
芝居中には、なんと100句以上もの俳句が引用されている。それが声に出してだけでなく、舞台上手にスライドでちゃんと表記されていく。(まぁ有名すぎる芭蕉の俳諧は敢えて投影されないが)
115分の芝居に100以上の俳句の引用は異常なバランスだが、これがこの作品の肝を成す。俳句に賭けた4人の女たちのそれぞれの戦いはドラマチックなお話ではなく、俳句を通してお話を展開するべきだからだ。ただ、俳句をじっくり見ていく余裕がないから、せっかくの俳句がだた流されていくばかりでそこはもったいない。
高橋恵はドラマチックな展開すら避けていく。淡々と彼女たちの日常に寄り添ってひたすら句作に没頭する。いや、それは叶わない。彼女たちにはまず生活があるからだ。日々の営みの中に俳句は埋もれてしまうこともある。戦争が当然背景に描かれるが、背景以上には敢えて描かない。彼女たちにとって戦争は大きなものだが、大事なものではない。大事なのは俳句だ。高浜虚子や山口誓子といった男性俳人も登場するがあくまでも4人が主人公である。
しっかり女性目線を貫いて、しかも必要以上の主張はしない。あくまでもこれは俳句の話だということを貫く。女たちの俳句集。