早いテンポで短いシーンを積み重ねていく。サスペンスタッチで、主人公を心理的に追いつめていく。自分には才能がないのではないか、という不安。オリジナルブランドを任されたことへのプレッシャー。彼女は一瞬であらゆるものを見定めて、完全にコピー出来るという能力を持つ。その才能はコピーする能力であってオリジナリティーではない。アレンジならできるけど独創的なアイデアはない。何をやってもどこかで見たものになる。本当の自分らしさって、何? そんなものはあるのか。
自分はただのからっぽな存在でしかないのではないか。アシスタントとして有名なデザイナーのもとで働いていたが、今は独立して活躍している。だが、自分は先生のコピーでしかないのではないか、と思う。アシスタント時代、自分のアイデアを先生は盗んでいた。それは耐えられない屈辱だ。先生は自分の才能をいいように利用していただけではないか。
久しぶりに先生のもとを訪ねる。言い争いから、先生を突き飛ばしてしまう。テーブルで頭をぶつける。すぐに去ったのだが、自分は、先生を殺してしまったのではないか、と思う。隣に住む女が、なぜか毎日自分と同じ服を着て、自分と同じような行動を取る。あの女は何者なのか? どこが現実でどこが妄想なのか。「誰カガワタシヲ盗作スル」というサブタイトルも刺激的だ。そのままの展開だ。
今回のレトルト内閣の新作はアパレル業界を舞台にした心理的ホラーである。どす黒い赤で全体を統一した舞台美術の色は、彼女の心の中が、表面に出たもののようで、それはまるでドロドロした彼女の内臓を抉りだしたようだ。そんな空間の中、彼女は成功への道をひた走る。と、同時にどんどん追いつめられていく。そんな姿が描かれる。90分というタイトな上演時間も心地よい。アップテンポで一気呵成にラストまでノンストップで走り抜ける。いつものように歌劇のスタイルで、華やかな世界の闇をきらびやかに見せる。めまぐるしく変わる衣装替えも含めて、視覚的にも楽しめる作りとなっている。これは一種の心理的ホラーなのだが、作りとしてはミステリーでもあり、サスペンス劇でもある。なんとも贅沢な作品だ。
お話自体はナタリー・ポートマンが主演した『ブラックスワン』と同じパターンだ。プレッシャーに押しつぶされていく。どんどん追いつめられていく。心身のバランスを崩す。幻影を見る。よくある展開である。終盤の時間を逆戻りさせていくことで、本当の自分を見るというクライマックスもよくあるパターンだが、とても上手い見せ方だ。
幻影として終わらせた『ブラックスワン』と違って、こちらはすべてが仕組まれたもので、ちゃんと理に落ちるように出来ている。話の作り方はとても上手い、と思う。だが、このわかりやすさは、作品自体から奥行きを奪う。最後は単純に内面的なドラマとして完結させてもよかったのではないか。このタイプのお話にはオチはいらない。観念的な話のままでいい。そこに理由付けを施して観客を納得させても意味はない。そんなことよりもどんどん観客を更なる恐怖に叩き込んでいくほうがよい。
自分はただのからっぽな存在でしかないのではないか。アシスタントとして有名なデザイナーのもとで働いていたが、今は独立して活躍している。だが、自分は先生のコピーでしかないのではないか、と思う。アシスタント時代、自分のアイデアを先生は盗んでいた。それは耐えられない屈辱だ。先生は自分の才能をいいように利用していただけではないか。
久しぶりに先生のもとを訪ねる。言い争いから、先生を突き飛ばしてしまう。テーブルで頭をぶつける。すぐに去ったのだが、自分は、先生を殺してしまったのではないか、と思う。隣に住む女が、なぜか毎日自分と同じ服を着て、自分と同じような行動を取る。あの女は何者なのか? どこが現実でどこが妄想なのか。「誰カガワタシヲ盗作スル」というサブタイトルも刺激的だ。そのままの展開だ。
今回のレトルト内閣の新作はアパレル業界を舞台にした心理的ホラーである。どす黒い赤で全体を統一した舞台美術の色は、彼女の心の中が、表面に出たもののようで、それはまるでドロドロした彼女の内臓を抉りだしたようだ。そんな空間の中、彼女は成功への道をひた走る。と、同時にどんどん追いつめられていく。そんな姿が描かれる。90分というタイトな上演時間も心地よい。アップテンポで一気呵成にラストまでノンストップで走り抜ける。いつものように歌劇のスタイルで、華やかな世界の闇をきらびやかに見せる。めまぐるしく変わる衣装替えも含めて、視覚的にも楽しめる作りとなっている。これは一種の心理的ホラーなのだが、作りとしてはミステリーでもあり、サスペンス劇でもある。なんとも贅沢な作品だ。
お話自体はナタリー・ポートマンが主演した『ブラックスワン』と同じパターンだ。プレッシャーに押しつぶされていく。どんどん追いつめられていく。心身のバランスを崩す。幻影を見る。よくある展開である。終盤の時間を逆戻りさせていくことで、本当の自分を見るというクライマックスもよくあるパターンだが、とても上手い見せ方だ。
幻影として終わらせた『ブラックスワン』と違って、こちらはすべてが仕組まれたもので、ちゃんと理に落ちるように出来ている。話の作り方はとても上手い、と思う。だが、このわかりやすさは、作品自体から奥行きを奪う。最後は単純に内面的なドラマとして完結させてもよかったのではないか。このタイプのお話にはオチはいらない。観念的な話のままでいい。そこに理由付けを施して観客を納得させても意味はない。そんなことよりもどんどん観客を更なる恐怖に叩き込んでいくほうがよい。