4年前の映画『ぼけますから、よろしくお願いします』の続編。前作は見ていない。今回も見る予定ではなかった。そんな勇気はない。予告編を見ただけで泣いてしまった。だから、本編を見るなんて、ありえない。でも、たまたま時間の関係で見ることにしてしまった。
昨年母を亡くして、もうすぐ1年になる。認知症になり、ある日、倒れて、入院した。脳梗塞から半身不随状態になり、肺炎で亡くなった。 とてもじゃないけど、この映画は見ることはできない、と思っていた。でも、娘がカメラを回して追い続けた記録を目撃することで、そこに何が描かれるのか、とても気になっていたのも事実だ。だから、今回、勇気を出して見てみようと思った。
とてもいい映画だ。優しい。90代で妻の介護をすることになった父親に寄り添い、カメラを回す映像作家である娘。彼女の覚悟がこの映画の前提にある。ふつうこれは撮れないよ、というような局面でも冷徹にカメラを離さない。撮られることを受け入れて彼女に協力する両親も凄い。これは家族だからできた映画だろう。そうじゃなければ、不可能だ。
自分のことと重ね合わせて、見てしまう。客観的に見るなんて不可能だった。ずっと母とのことを思いながら、スクリーンと向き合う。自分のこと、自分がしてきたことが映画と二重写しになる。母は病院で90歳を迎えた。コロナのせいで面会も叶わず、最後の誕生日は実家に行き、父のいる仏壇に手を合わせ、一緒に祝った。一人暮らしだった家は入院からひと月、誰もいないから当然、ひっそりしていた。帰りたかったはずだ。この映画で転院の途中で家に寄るシーンが描かれていたけど、そんなことは不可能だった。僕の母親も、せめて転院時に自宅に寄れたならよかったのになぁ、なんてことを思ったけど。
だめだ。こんなことばかり書いてしまう。この映画の話なのに。100歳になった父親を描く映画を今も彼女は作っているのだろう。それがどんなものになるのか、次回作も見てみたい。