12月の小説には強烈な作品が多かった。(まぁ、たまたま自分が手に取ったのがそんな本ばかりだっただけだろうけど)特にこの辞書みたいにごつい(ハードカバーで500ページ近くに及ぶ)長編の怒濤の不幸つるべ打ちには閉口した。(ほんとうは450ページだけど)
20年後の未来から届いた手紙に返事を書くことで、今の過酷な状況を乗り越えていこうとする10歳の少女の地獄めぐりが描かれる前半も強烈だが、後半、主人公が変わって3つの視点から、前半の少女に起きた出来事の背後が描かれていくのだが、ここでもまた、もうこれ以上ないか、と思われる地獄めぐりが繰り広げられていく。
虐待、いじめのオンパレード。うんざりさせられる。なのに、読んでしまう。いったいこれはどこの落としどころがあるのか、気になるからだ。だけど、最後まで読んで、そんなぁ、と思う。ラストの尻切れトンボな終わり方にはがっかりさせられた。それでも、未来はある、というラストなのだけど、あれでは納得がいかない。
それぞれのお話にそれぞれの決着はあるけど、だから、どうなのか、というと、どうとも言いようがない。確かに気持ちのいい、しかも、簡単な(明瞭な)答えなんか提示できないだろう。小説だから、都合のいい終わらせ方は可能かもしれない。しかし、作者はそうは思わないし、読者もそんな単純なものを期待しないだろう。だけど、もう少し何かが欲しい。物語としての仕掛けは、あってもいい。
未来からの手紙によって生きる希望を得たはずなのに、さらに過酷な試練が待つ。怒濤の展開である。しかも、手紙の主もまた同じように信じられない過酷な人生を歩んできた。不幸の連鎖がこれでもか、これでもか、と描かれもう笑うしかない。(笑えないけど)作者はそれでも、あなたたちには未来があると、いうのだ。それを受け入れられるか否かでこの小説に対する評価は別れることだろう。小4からスタートして中3まで。微妙な設定だ。そこに、彼女を助けるクラスメートの不幸と、手紙の主である先生の不幸。さらには、少女のすべての元凶である母親の不幸。そんな彼女(主人公の母親のこと、ね)を救ったはずの父親の少女(娘のことだけど)への救いの手。
すべてが終わった後、残されるのは、このあとの彼女の未来だ。未来は見えないから、ここでは描かれない。だけど、作者は彼女の未来を信じているのだろう。これ以上の悲惨はない(わけではない、かも)。でも、そこに未来がある、と。