児童書の新刊コーナーの棚にあったけど、これは児童書とは言えないなぁ、とも思う。かなり微妙で難しい問題を扱っている。だけど、文体は平易だからもちろん小学生でも読める。
中学1年生男女が主人公で学校が舞台になるから児童書に分類されたのだろうか。お話はクラスメイトの田中くんが自分は人型アンドロイドだよ、宣言したことから始まる。理子ちゃんは信じないけど、鞠奈ちゃんは信じる。
近未来の設定でSF小説、というわけではないみたいだから、ほんとじゃないと思うけど、田中くんは悪びれることなく主張する。ハーフで優しいし、男前で頭もいい。理想的な男の子。前半部分は、かなり面白い。この先どうなるか期待された。本気でAIだったらどうなるのかとドキドキする。だが、ネタばれからラストまでの展開はつまらない。せっかくのまさかの展開が、毒親による虐待では意味はない。もちろん作者の狙いはそこにあり、AIは仕掛けでしかないのかもしれないが、心を持つ全く人と変わらないアンドロイド(『ブレードランナー』のルドガー・ハウアーである!)という設定を中学生の学園ドラマに落とし込んだ仕掛けは素晴らしい。できることならその線で話を推し進めてもらいたかった。フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』に匹敵する学園ドラマを期待させたから、結末がしっくりこない。