3話からなるオムニバス。作、演出は昔からよく知っている栗山勲さんの息子である栗山拓。こんなことはこの芝居とも劇団とも関係ないからここに書く必要はないのだが、栗山くん(お父さん、ね)とは大竹野正典の芝居で出会い、大竹野の息子である春生くんが父親と同じように芝居をしている今、栗山家も親子二代で芝居をしているのか、という感慨をここにも書いておきたかった。そんなことは私信でしかないから、個人的に書いたら充分なことだけどついつい書いてしまった。(まぁ、このブログがほぼ私信だから、いいなぁ、もう)
さて、そんなことより芝居である。これがまぁ、まさかの傑作だったのだ。3話からなるオムニバスという告知とは少し違って、作品は1本の長編だ。(3章仕立てにはなっているけど)先が読めない芝居で、どうなるかは予断を許さない。だけど、なんだかのんびりしていて、笑える。わかるようで、よくわからない話。ホン・サンスのグダグダ映画に少し似ている。いい加減な教授と同じくいい加減な女子大生のコンビがお墓でダラダラ雑談をする会話劇(らしい)。見たのに(らしい)と書くのは、挿入された3つのお話が、ふたりの雑談の中の話だとは思わなかったからだ。
回想シーンではなく、劇中劇というわけでもなく、リアルタイムの出来事のような感触で綴られる。人間関係も最初はわかりにくい。第1話は教授の過去、第2話はふたりの出会い、第3話は友人の恋バナ、だけどそれぞれのエピソードが、1本に繋がり、切れ目がない。独立した話ではなく、ちゃんとつながっていく。だから、3話に教授の養父の幽霊が出てきても構わない。というか、死者が見えるし、話も出来るふたりという設定が、お話の根幹に関わらないのが変。(褒めてます)なんだかいたずらにルーズな芝居でそれが可笑しい。学年末最後の授業を休講して、墓参りする。教授にレポート提出するため追いかけていく成績不良の女子大生。この凸凹コンビの珍道中。
第3話のテンコとモドリ先輩のラブストーリーのバカバカしさは噴飯もの。しかもあれでおしまいなのだ。笑える。よくもまぁこんな芝居を思いついたものだ。バカバカしいシュールさが素晴らしい。