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映画・演劇のレビュー

白尾悠『隣人のうたはうるさくて、ときどきやさしい』

2025-01-23 21:31:00 | その他
白尾さんの新作は優しい。今回もシェアハウスの話。(シェアハウスというよりコミュニティの話だけど)彼女はこの手の話が好きみたい。ココ・アパートメントは多世代住人が協働するコミュニティ型マンション。ここで暮らすさまざまな人たちの人間模様が描かれる短編連作。(これも一応結果的に長編小説になっているけど)

最初の高校生エリートの話から始まって、彼がパートナーになる老女(康子)の話まで。さまざまなお話の中でここに至るまでのそれぞれの人生が語られる。もちろん同時にここでの生活も、ね。シングルの母娘、結婚しない(子どもを作りたくない)カップル、発達障害の子どもを育てる夫婦、このシェアハウスを作った裏の家に住む大家、など。ここにはいろんな人がいる。みんなで一緒に助け合って暮らしている。そんな5つの話はつながり、続いて、やがてラストの壮大な康子さんのドラマに。同性カップルは日本の東北からドイツに、さらには世界を転々として東日本大震災で被災した故郷に戻り、最後はこのココ・アパートメントに至るまで。

ここで描かれる優しさは必ずしも甘いものではない。それどころが実にシビアな一面ものぞく。みんながある種の距離を置いて付き合っている。お互いが他人であるという自覚からスタートする優しさ。だがこの隣人たちは新しい時代の家族になっている。こんな協働生活って素敵だと思う。それは確かな新しい家族のスタイルを提示する。

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