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映画・演劇のレビュー

ババロワーズ『ヒューマノイド自治区3丁目17番地ももいろタウン』

2010-06-16 20:54:35 | 演劇
 とても微妙な差なのだが、その差がかなり気になる。先週見たクロムモリブデンと同じ方向性を示す作品だと思う。とんでもなくバカバカしくて無意味である。でも、その無意味を極めると清々しくさえある。

 クロムの突き抜け方と、ババロワーズの思い切りの悪さは、紙一重の差であろう。だが、その違いは大きい。本来、この作品の描く暴力はクロムの作品に顕著だった特徴だ。それに対して今回のクロムの設定はババロワーズが得意とするジャンルではないか。両者の逆転は偶然のことだが、なんとも興味深い。その結果、今回のババロワーズは失敗し、クロムは成功する。この原因は何なのか。両者の資質と表現のアプローチを解明したい。

 高瀬さんは敢えて了解のうえでこういう作り方を目指したのではないか。対人恐怖と暴力の衝動の向こうにある幸福に辿り着くまでのドラマを上手く組み立てきれたなら、これは画期的な作品になったかもしれない。だが、作品のテーマに向けての詰めの甘さがせっかくの可能性を殺いでしまった気がする。今回の作品は求心力が必要だった。なのに、高瀬さんはそこを重視しなかった。

 クロムの成功は、青木さんがくだらなさをテーマにはしないで、ただくだらないままで極めたところにある。スタイルから芝居を発想する。中身なんかないのだから、ひたすらスタイリッシュに作ればいい。その潔さがいい。

 制作面での要請もあって2時間の作品にしなくてはならなかったのだろうが、出来ることならこの作品は100分以内の芝居としてまとめたいところだ。上演時間のことだけではなく、作品自体をもう少しタイトに仕立てられたなら、きっと切れ味がよくなったはずだ。そうすることで高瀬さんの描きたかったものはストレートに伝わる。

 所帯を大きくしすぎて、それぞれの役者の見せ場を容認した結果全体がかなりもたもたしたものになってしまったのは惜しい。設定は特に目新しいものではない。これをいつもの勢いだけでいいかげんなノリで一気に突き進む芝居にしたならよかったのだが、そうはしなかった。もちろん作品自体はとてもバカバカしいし、その馬鹿を貫き通すだけの力はある。だが、今回はそういう方向ではまとめなかったのも事実だ。

 友情と夫婦愛の物語へと収斂されていくのも悪くはない。ラストはババロワーズらしくないしっとりとした終わり方にもなっている。しかし、そのことも含めて作品に迷いがありすぎて居心地があまりよろしくない。高瀬カラーが一歩退いた形となっている。もっとぐいぐいとくだらなさで押し切って欲しかったのに、少し真面目になりすぎた。



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