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映画・演劇のレビュー

『屋根裏のラジャー』

2023-12-22 08:37:00 | 映画

先日TVで放映されていた『メアリと魔女の花』のスタジオポノックの第2作。監督は今回は百瀬義行。「ポノックはジブリの後を継ぐアニメスタジオだ!」という事を証明する傑作になればいい、という期待に胸を膨らませて見に行く。

結果そういうのはよくないな、と思った。要らぬ先入観は作品を歪める。これは『メアリと魔女の花』以上に宮﨑駿や高畑勲とはまるで違う百瀬さんの映画だ。全体のタッチは軽い。悲壮感はない。イマジナリーの世界と現実の差を強調しない。あっさりサクサク話は進んでコクがない。だが、それが彼の個性になっている。

ラジャーが現実の世界で戦い、アマンダを取り戻すというドラマはそれでいいが、ただ途中からアマンダの心情がお座なりになったのは苦しい。眠ったままだから仕方ないけど、彼女の戦いとラジャーの戦いがシンクロしてバンディングと向き合うラストにつながるという図式が曖昧になる。これはあくまでもアマンダの戦いでもある。

しかも肝心の敵役バンディングのイッセー尾形はミスキャストだ。彼の声を聴くと本人の顔が浮かんできて映画に乗り切れない。しかも彼が演じるバンディングの描き込みが弱くて余計に興醒め。まさかイッセー尾形が映画の足を引っ張るなんて思わなかった。彼だけでなく豪華俳優陣が演じる声があまり効果的ではない。こちらもあっさりし過ぎている。

映画としてのタメがない。だから感動的な映画にはならない。サラッとしているけどそこに彼らの悲しみが滲み出る映画であればよかったのだが。残念だ。


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