児童書(図書館ではYA小説に分類されていた)だけど、まさかの展開で、ミステリー仕立てにもなっている。3人の子どもたちが主人公。それぞれが家庭に問題を抱えている。ふたりは学校で虐めにも遭っている。傍観者である陸と虐めを相手にしない菜摘。孤高のふたりが出会ったライトはふたりがそれぞれ隠し持っている心の秘密を言い当てる。あり得ないことだ。だからふたりはライトと唯一の友だちになろうとする。
誰とも関わりを持たないで自分から孤立している3人が、たまたま付き合い始める。心を読むことができる少年にふたりは惹かれていく、という構図を最後まで貫く。ふたりはライトの家(豪華なタワーマンション)に入り浸る。ライトはふたりを迎え入れるが、何も語らないし、何もしない。ふたりはそこにいないように自分時間を過ごす。そんなライトの内面はふたりの目から語られるだけ。彼の本音は見えないまま。
あくまでも彼らは個の存在で、交流はない。だから安易な友情物語にはならない。この距離感がもどかしいけど、なんだか新鮮だ。だからこれはよくあるようなパターンには堕さない。
12歳という時間を17歳になった今から照射する。たった5年前だけど、12と17の溝は大きい。各エピソードには最初に17歳の視点からの表記がある。あくまでもこれはリアルタイムではなく、回想なのだ。
回想の中で、やがて、彼らは集団自殺を試みる。もちろん死なないことは明白だ。17歳の彼らの回顧録なのだから。ただその時初めてライトがふたりを積極的にリードする。結局は(もちろん)やらないけど、でも決行と中止は紙一重の差だ。
死んでもいいと思ったのは事実で、彼らをそこまで追い詰めたのは彼らの家庭環境にある。そこには直前に読んでいた『生きづらさ時代』とも通じるものがある。表面的には明るい児童書を装っている。(タイトルやカバーからの印象、ね)だけど、これはかなりシビアな問題に鋭く切り込んだ作品だ。