習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『中学生円山』

2013-06-09 22:08:15 | 映画
 いろんな意味でこれはどうよ、と思う。バカバカしいにも程がある。中2男子の頭の中は妄想だらけ、というお話なのだが、それだけで2時間やり続ける。こんなバカな映画を作る方も作る方だが、見る方も大概ではないか、と自分に呆れる。宮藤官九郎だからできた。偉業だ。

 大笑いして見た。だけど、それだけ。それ以上でも以下でもない。こんな企画にGOサインを出した東映ってすごい。一体全体誰をターゲットにした映画なのか、それすらもわからない。もちろん、お客は入っていない。あたりまえのことだろう。でも、クドカンは全く気にしていないだろう。超然として、この事態を見守るはずだ。確信犯なのだから。

 彼でなければ相手にされないような企画だ。彼だから、ここまで出来た。というか、こんなバカに付き合ったスタッフ、キャスト(特に、主人公の少年を演じた平岡拓真は捨て身でこの役を演じている!)は素晴らしい。

 この作品は、今はやりの団地映画でもある。だが、団地である必然性は感じさせない。『みなさん、さようなら』のようにまず団地ありき、の映画ではないから別に気にすることではないのだろうけど、せっかく舞台をここに設定したのだから、ここである必然性があってもよかったのではないか。その点だけでなく、いろんな意味でこの作品は中途半端に思える。全体の作りが緩い。

 この映画を見る直前に『俺俺』を見ているから、どうしても比較すると、あっちの方が凄い、と思ってしまう。傾向のよく似た映画を連続して見るのはなんだかもったいない気がした。こちらの妄想力はあれには及ばないのだが、それだけではなく結局は2本とも妄想だけでは映画にならない、という当然の事実を露呈させた気がする。映画はその妄想のさらに先に向かわなければ映画としての力を持たないのだ。そういう意味で、安部公房は凄いな、なんて思わされた。

 なんて言いながら、クドカンはそんなこと、まるでなんとも思ってない、ことは重々承知している。ただ、バカを延々としているだけの映画を作りたかったのだろう。だから、最初にも言ったようにこれはやはり凄いのだ。ふざけているわけではない。それどころか、大真面目に妄想を垂れ流す。


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