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映画・演劇のレビュー

大崎善生、谷村志穂『シーソーメイル』

2015-12-06 10:54:47 | その他
こういうシンプルな作品が、なぜかとても心地よい。2人の作家が、リレー方式で、メイルのやり取りをする、というスタイルがいい。手紙ではなく、メイルというのが、今風、というか、実に安易。表面的には。でも、そんな簡単なところが、ここでは上手く機能する。今の気分を代弁する作品になる。もともとこれは「TOKYO FM」でオンエアされたラジオドラマだったらしい。それを再編集して読み物にした。

昔、同じようなラジオドラマで『日曜日の街から』(たぶん、そんな感じのタイトルだった。少し気になるから調べると、「『愛の街から』(あいのまちから)は、エフエム東京(現:TOKYO FM )で制作され、JFN系列で放送されたラジオドラマ。 ... 放送時間は毎週日曜日午前10時 からの1時間番組。 放送開始は1977年8月7日で、最終回は1983年9月25日。全321 ...」とあった)というのがあった。

男女が旅先で出会い、恋に落ちる、というような感じ。毎週日曜日の朝10時が楽しみだった。(高校生の頃の話だ)ちょっとした会話と音楽で構成されたドラマで、日曜の朝からとてもいい気分にさせられた。きっと、今日はいい日になる、と思えれた。(でも、その後はいつも、特別なことなんかなく、ありきたりな日曜が終わるのだが)

あのドラマの気分がこの作品の中にはある。だから、なんだか懐かしかった。まだ、子供だった頃の、日曜日。これを少し寝坊した寝床で聴いた後、起きてきて、11時からは『兼高かおるの世界の旅』を見る。旅することが、恋することと同じように夢だった。自由に旅することは出来なかったから憧れる。そんな10代の頃って、今考えると、とても幸せだった気がする。自由じゃなかったから、とても、自由だった。想像の世界ではいつもいろんなところを旅していた。

この『シーソーメイル』を読みながら、そんなどうでもいいようなことを考えていた。別に中身なんかない。1時間もあれば、こんなのすぐに読み終えれる。でも、慌てて読む必要なんかない。いろんなことを、思い出しながら、ここではない、もうひとつの時間に想いを馳せる。

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