重松清の小説の映画化は難しい。お話の面白さで充分満足させられるのだが、それを映像化しても原作以上の面白さを提示できないからだ。しかも、TVなら、まだしも、映画はダメだ。お話があまりに小さすぎて映画館のスクリーンに映す必要性を感じさせない。今回は野球ネタだし、甲子園で野球するシーンがクライマックスにあるから、映画的だと踏んだのだろうが、甘い。お話はマスターズ甲子園を目指すお父さんたちの奮闘記というような枠には収まらない。28年前に封印していた出来事を蒸し返し、そこからお話を展開させていくのだが、いつものようにこれもまたホームドラマなのだ。壊れかけた家族の再生とか、変わらないお話が展開していく。それはそれで見ているぶんには心地よいのだが、2時間の映画としてのダイナミズムには欠ける。
ホンワカしたヌルい映画になっている。監督は『風が強く吹いている』の大森寿美男。前作がとても好きだったから期待したのだが、少しがっかりした。もちろん、悪い映画ではない。それどころかとてもよく出来た作品だと思う。丁寧な描写で、これだけのお話をよく2時間にまとめあげた。さすが脚本家出身だけある。自身による台本を過不足なく映画化している。文句の付けようがない。と言いながら、僕はここまで書きながら、きっとこの映画に文句を垂れている、気がする。素直に感動した、とか書いてないし。
何が物足りないのかははっきりしている。あまりにも、これがいい話すぎるのだ。いろいろあるけど、みんなよかったね、というお話なのである。じゃぁ、それのどこが悪いのか、と開き直られると、ごめんなさい、と言うしかない。別に何も悪くはないです。それどころか、とてもいいです。
ただ、なんだかそういうのって、気持ちが悪い。うそくさい、と感じてしまうのだ。中井貴一演じる主人公は、たまたま訪ねてきた女子大生(波瑠)を家に入れてしまう。そして、彼女の話に耳を傾ける。「マスターズ甲子園の出てみませんか!」なんて言われても、ありえない、と言うしかない。もちろん最初は「間に合ってますから」と、けんもほろろの対応をする。だが、彼女がピンポイントで彼のもとを訪ねてきたのには、ちゃんとした理由がある。彼女が28年前の不祥事を起こした野球部のチームメイトの娘で、父の秘密(罪)を知りたいと望んだからだ。お話はそこから始まる。
やがてチームメイトが集められ、再び甲子園を目指す。今度こそ、甲子園の土を踏む。でも、そんな単純なことではないのだ。そのことは彼ら自身が一番よく知っている。あの頃甲子園を目指してすべてを犠牲にして戦ったこと。そこに悔いはない。それだけに、その想い出を今の生活の中の遊びのひとつにはしたくはない。それのもう野球は何年もしていない。そんなお父さんたちの群像劇にはしない。2時間では無理だからだ。主人公は中井と柳葉敏郎他、数人になる。当たり前だ。そうすると、おのずとお話は中井と波瑠が中心になる。当たり前のことだ。だが、そうなることで、映画はとても小さなよく出来たお話に収束する。結局、ちょっといい話、になるのだ。それが僕には歯がゆい。
ホンワカしたヌルい映画になっている。監督は『風が強く吹いている』の大森寿美男。前作がとても好きだったから期待したのだが、少しがっかりした。もちろん、悪い映画ではない。それどころかとてもよく出来た作品だと思う。丁寧な描写で、これだけのお話をよく2時間にまとめあげた。さすが脚本家出身だけある。自身による台本を過不足なく映画化している。文句の付けようがない。と言いながら、僕はここまで書きながら、きっとこの映画に文句を垂れている、気がする。素直に感動した、とか書いてないし。
何が物足りないのかははっきりしている。あまりにも、これがいい話すぎるのだ。いろいろあるけど、みんなよかったね、というお話なのである。じゃぁ、それのどこが悪いのか、と開き直られると、ごめんなさい、と言うしかない。別に何も悪くはないです。それどころか、とてもいいです。
ただ、なんだかそういうのって、気持ちが悪い。うそくさい、と感じてしまうのだ。中井貴一演じる主人公は、たまたま訪ねてきた女子大生(波瑠)を家に入れてしまう。そして、彼女の話に耳を傾ける。「マスターズ甲子園の出てみませんか!」なんて言われても、ありえない、と言うしかない。もちろん最初は「間に合ってますから」と、けんもほろろの対応をする。だが、彼女がピンポイントで彼のもとを訪ねてきたのには、ちゃんとした理由がある。彼女が28年前の不祥事を起こした野球部のチームメイトの娘で、父の秘密(罪)を知りたいと望んだからだ。お話はそこから始まる。
やがてチームメイトが集められ、再び甲子園を目指す。今度こそ、甲子園の土を踏む。でも、そんな単純なことではないのだ。そのことは彼ら自身が一番よく知っている。あの頃甲子園を目指してすべてを犠牲にして戦ったこと。そこに悔いはない。それだけに、その想い出を今の生活の中の遊びのひとつにはしたくはない。それのもう野球は何年もしていない。そんなお父さんたちの群像劇にはしない。2時間では無理だからだ。主人公は中井と柳葉敏郎他、数人になる。当たり前だ。そうすると、おのずとお話は中井と波瑠が中心になる。当たり前のことだ。だが、そうなることで、映画はとても小さなよく出来たお話に収束する。結局、ちょっといい話、になるのだ。それが僕には歯がゆい。