高級分譲シニア・マンションを舞台にした老人たちの暴走とそれに振り回される若者たちを描く短編連作。老人と若者の対比からドラマを紡ぐという設定はなかなか斬新でいい。
原宏一らしいコメディだが、ただ扱う問題がシニアの在り方といういささか難しい問題で笑い飛ばすには心苦しい。セレブを主人公にしているから、お金があるから、深刻にも、シリアスにもならないというところもあるけど、やはり微妙。
最初のスポーツを巡る話も微妙に納得いかない。競い合いはよくないから、スポーツはダメとか言う老人をいかに説得するかがお話のポイントになるのだが、彼自身は競争世界からの脱落者で拗ねているだけというのはなんだかなぁ、と思う。過剰な運動は命取りだが、適度な運動は体にいい。大事なのは楽しいかどうかで、そこをお座なりにしてはならない。競い合いは付随してくるだけ。
さらに読み進めると、これはエンタメ小説なのだった。3話目なんて、バカバカしくて時間のムダ。ただ、滑っても原宏一だから、読み物としては面白い。だから割り切って軽いエンタメを楽しんでみる。「たわごと」と作者も言っているし。これはシリアスで深刻な老人問題ではない。
最後まで読んで、やはりこれは別に老人問題だけを前面に出した作品ではないな、とわかる。老人を主人公にして、彼らと向き合う若者たちも巻き込み、生き方を模索するコメディ。だから気楽に軽く読んで楽しみましょう。