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映画・演劇のレビュー

吉田修一『ぼくたちがコロナを知らなかったころ』

2023-10-22 05:30:00 | その他

タイトル通りコロナ前に書かれたエッセイを集めたもの。例によって『翼の王国』の連載中のエッセイ最新刊。

一昨日から東京に来ているから、その間の読書や映画はお休み。町歩きが中心。今回は新宿から渋谷方面が中心。旅のお供の本はこの一冊だけにした。まぁ今回はたった4日だから、ね。

吉田修一によるこの旅のエッセイは楽しい。旅先だけでなく、東京の町歩きにもなっている。なんでもないことを、なんとなく書いてあるのがいい。もともと旅する飛行機の中で読むために書かれたものだから、旅に関わる軽いタッチが中心で短いエピソードが並ぶ。

今回コロナ前と銘打っているが、たまたまそうなったから、そうした、だけ。旅ができない時間がこの後にはやってくるけど、まだ書かれた時には知るべくもない。

僕の旅の目的のひとつはレンの保育所の運動会だったはずなのに、コロナの入場制限で家族は4人までルールから僕は見れなくなってしまった。仕方ないからこの日の午前は単独行動。たまたま東京都写真美術館でやっていた『風景論以後』展を見る。これが素晴らしい。なんと今回の旅のハイライトになる。まさかの『略称・連続射殺魔』を見ることができたのだ。うれしい。(別項参照)

若松プロの『ゆけゆけ二度目の処女』(ダイジェスト版)や大島渚の『東京战争戦後秘話』(これも先日ようやくAmazonプライム・ビデオで見たばかり)のオリジナル予告編も見ることが出来た。

この企画展と今回の旅を通して60年代終わりの東京の風景から、今歩いている2020年代の東京の風景を重ねて見ることも可能になる。さらにはコロナ前の日常を綴る本作とコロナ禍(一応、コロナ後か)の今を重ねて、この一冊を読む。

さらには、この一冊のラストは明日帰る大阪である。本を通して、吉田修一と僕とがホームとアウェイを介し(しかも途中には先月行った台湾まで挟んで)別々に(もちろんのこと)出会うことになった。いろんな意味で(個人的に)いい選択をして、このエッセイを楽しめた。


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