SABU監督の最新作(とはいえ、昨年6月公開作品だが)をようやくDVDで見る。それなりには期待していたけど、期待はずれの一作。「オフィス北野」製作というのも、なんだか気になったけど(だって、オフィス北野は北野武監督作品を作る会社なのだから)SABUが今までとはいささか違うスタンスで挑んだこの野心的な作品が、中途半端で、まるで迷いだらけの作品になったわけが知りたい。製作側からの横槍ではなく、彼自身の迷走だとは思うけど、ここで彼がやりたかったものがまるで見えてこないのが気がかりだ。せめて、こんなことがしたかったけど、大失敗した、とかいうのなら、まだ納得する。ただただ中途半端な不完全燃焼。
『ベルリン 天使の詩』を換骨奪胎して日本版の焼き直し。そんな域で留まるなんて、不本意だろう。しかも、SABUらしいアクションシーンや疾走シーンを盛りだくさんにしたのも、マンネリにしか見えないようでは何をかいわんや、だ。
松山ケンイチはこの作品の後の『珍遊記』でも同じようにバカバカしい芝居をさせられて、それはそれで悪くはないけど、それだけでは、やりがいがないはずだ。せっかくSABU監督に呼ばれて、気合いを入れて臨んだ現場だったはず。ヒロインとして迎えられたはずの大野いとも、これでは何のために出たのか、わからない。
天使が(天の茶助だけど)地上に舞い降りて死ぬ運命の少女を助けるために奮闘する、なんていうよくあるお話をあの手この手で見せるのだけど、脚本自体が杜撰で、天上のルールをどんどん無視して自由奔放に振る舞う茶助に対して、何のおとがめもないのは、いいのか? このやりたい放題の先には何があるのか。せめてそこはちゃんと描いて欲しかった。彼の思いは天上界の勝手な台本に翻弄される人々をどうしたら救えるのかにあるはずなのだが、不条理はこの世の常で、たったひとりの天使に何も出来はしない、というのが、現実だろう。そんなことはわかっているけど、それでもやらねばならないことがある。そこを、しっかり描いたなら、これはこれで納得できる映画になるはずなのだ。ヴィム・ヴェンダースを超えろ、とか、そんなことはどうでもよくて、彼なりの落とし前が欲しいのだ。