今日本ではこんな感じの映画がたくさん作られて公開されている。自主映画に毛が生えたような長編劇映画が量産されて誰にも知られないまま消えていく。もちろんその中には傑作だって隠れている(かもしれない。)誰かが発見することで日の目を見ることもあるだろうけど、ほとんどは見るに値しないか、わざわざ見るたびに疲れてしまうものばかり。Amazonプライムではそんな膨大な素人もどきの映画が配信されている。
これは昨年ひっそりとテアトル梅田で公開されていた作品である。それなりのキャストを集めた(一応)商業映画だ。だけどこれでは商売にはならないし、地味。かといってアート系映画というわけではない。話の詰めも甘いからツッコミ所は満載。だけど、気合いの入った映画で見終えてそれなりの満足感はある。悪くはないと思う。冒頭の森の木々を捉えたシーンからその静けさに引き込まれる。ちょっと『悪は存在しない』を思わせる。
森の中にあるレストランは最後の晩餐を受け入れている。もちろん死ぬことを奨励しているわけではない。だけど死にたいという人を引き止めない。ただ本人が望む美味しい料理を提供する。それを食べた後彼らがどうしようとも感知しない。娘を亡くし生きる気力を失った男は森で自殺するはずだった。だけど生き延びここでレストランをする。監督は、本作が長編デビューとなる泉原航一。
絶望を抱えてここにやってきた少女。父親の虐待を逃れるため。暴力的な父親はそれを愛だと信じている異常者。妻と娘を暴力で支配する。レストランのふたりは彼女を受け入れてアルバイトとしてここに留める。
この手の作品を見て思うのは緊張感の持続の困難さ。90分は長いか短いか。そこで何ができるかで勝敗が決する。この映画にはお話に説得力がないから、怖さが描ききれない。いいシーンはたくさんあるだけにとても残念だ。