毎日暇だから凄い勢いで本を読んでいる。1週間で5,6冊は読んだ。クラブの夏の大会が土曜日から始まり、その付き添いで終日体育館にいるからだ。待ち時間が毎日3,4時間はあるのではないか。もちろん、その間アドバイスをしたり、生徒と無駄話をしたりもしているから、ずっと読書をしているわけではない。だが、手持ち無沙汰だし、時間がもったいないから、本を手放せない。暑いし、しんどいから、本当は寝たいのだが、体育館にはベッドはないし、なみはやドームは空調が効いているからまだいいけど、千島体育館は最低。台風で雨漏りしたり、とんでもない。実は、くたくたの毎日で、暇、というのは嘘なのだが、現実問題フラフラになりながらも、読書の時間だけは充分にある、というのも事実だ。集中して読むにはあまりに過酷なのだが、そんな、こんなの中の読書なのだった。
さて、そんなふうにして読んだ今週の6冊の中で、一番おもしろかったのがこの作品なので、まずはこの話から始めよう。40代後半の女性が主人公。3か月前に恋人から振られて、仕事も辞めて、今は、無職の一人暮らし。なんだかとても悲惨に見えるはずなのに、本人は、いたってノーテンキ。なんとかなる、と思っているようなのだ。
だが、現実はなんともならない。いまだ未練がましく別れた恋人からの連絡はないかと待っている。そいつは彼女を棄てて、彼女とは別の、まだ子供を産めるくらいには若い女(!)と結婚したのに、しかも、彼女に不釣り合いなくらいにブサイクでつまらない男なのに、彼女は彼が妻から自分のところに戻ってくるのではないか、なんていう淡い期待を抱いている。惨めだとは思わないのか。46歳には見えないくらいに今でも魅力的で綺麗な彼女を振って、つまらない39歳の女と仕方なく結婚した、と男は言う。もう、そんなことを言う、という時点で最低なのだが、彼女はスマホを離せない。仕事を探すのだが、再就職はなかなか難しい。仕方なく、スーパーのレジの応募をみつけて面接に行く。だが、そこでも採用してもらえない。
どう考えても、こんな悲惨な展開はないだろう。彼女には未来はない。なのに、タイトルは「ミチルさん、今日も上機嫌」なのである。これは皮肉なんかではない。アホな女の話なのか、と思うかもしれない。だが、そうでもない。すべての50前後の独身女性が怒るのではないか、と思うくらいにノーテンキに彼女は生きる。
夢物語でしかないのかもしれない。でも、こういう設定で夢を描くなんて普通は出来ないはずだ。現実は目の前の立ちはだかる。こんなうまくいくわけもない。だが、悲惨に描けば、リアルなのか。そんな小説が欲しいのか、と言われたら、NOと答えるはずだ。悲惨なのは現実だけでいい。いや、果たして彼女のような境遇の女性は悲惨なのか。
バブルの頃、とても贅沢をして、散々いい思いをしてきたようだ。美人で、男たちからちやほやされて、仕事も選り取りみどりで、気付くと40代の後半になっていた。一度、結婚もした。でも、すぐに飽きて他の男を好きになり、離婚した。離婚のときに、マンションはもらったから、仕事はなくても、住む家はある。当座はしのげるだけの蓄えはある。
さぁ、そんな彼女にこれからどんな未来が待ち受けているのか。読みながら、辛い話になる、と最初は思った。だが、そんな予想を覆す。ノーテンキでハッピーな小説だった。このタイトルは強がりなんかじゃない。彼女はとても生き生きと毎日を過ごしていく。そんなバカな、と言いたいところだが、これはこれで凄いと感じた。
チラシを家に入れていく仕事をする。普通ならプライドが邪魔してそんな仕事は出来ない、と言いそうなところだ。だが、彼女は、気にしない。そこで、偶然一人のおばあさんと出逢う。彼女を助けたことから、老人たちのアイドルになる。今まで知らなかった世界が広がる。こんなところに、知らなかった冒険が待ち受けている。たいしたことではないけど、そういう些細なことが、繋がり、新しい可能性が見えてくる。幾つになっても、面白いことはある。現実はそんなに甘くはないだろう。でも、これを小説の中だけのお話だとは思わない。知らなかったこと、思いもしないこと、それが新しい自分を作る。そういうことについてのお話なのだ。
特別なことが描かれるわけではない。だが、彼女から目が離せない。随所に、彼女が昔の男たちと会う話が挿入される。そこで、彼らの今とあの頃とが対比されていく。後悔するのではない。前向きに今を考える上での参考にしていく。ささいなことしか描かれてない。でも、それだけで充分元気になれる。
さて、そんなふうにして読んだ今週の6冊の中で、一番おもしろかったのがこの作品なので、まずはこの話から始めよう。40代後半の女性が主人公。3か月前に恋人から振られて、仕事も辞めて、今は、無職の一人暮らし。なんだかとても悲惨に見えるはずなのに、本人は、いたってノーテンキ。なんとかなる、と思っているようなのだ。
だが、現実はなんともならない。いまだ未練がましく別れた恋人からの連絡はないかと待っている。そいつは彼女を棄てて、彼女とは別の、まだ子供を産めるくらいには若い女(!)と結婚したのに、しかも、彼女に不釣り合いなくらいにブサイクでつまらない男なのに、彼女は彼が妻から自分のところに戻ってくるのではないか、なんていう淡い期待を抱いている。惨めだとは思わないのか。46歳には見えないくらいに今でも魅力的で綺麗な彼女を振って、つまらない39歳の女と仕方なく結婚した、と男は言う。もう、そんなことを言う、という時点で最低なのだが、彼女はスマホを離せない。仕事を探すのだが、再就職はなかなか難しい。仕方なく、スーパーのレジの応募をみつけて面接に行く。だが、そこでも採用してもらえない。
どう考えても、こんな悲惨な展開はないだろう。彼女には未来はない。なのに、タイトルは「ミチルさん、今日も上機嫌」なのである。これは皮肉なんかではない。アホな女の話なのか、と思うかもしれない。だが、そうでもない。すべての50前後の独身女性が怒るのではないか、と思うくらいにノーテンキに彼女は生きる。
夢物語でしかないのかもしれない。でも、こういう設定で夢を描くなんて普通は出来ないはずだ。現実は目の前の立ちはだかる。こんなうまくいくわけもない。だが、悲惨に描けば、リアルなのか。そんな小説が欲しいのか、と言われたら、NOと答えるはずだ。悲惨なのは現実だけでいい。いや、果たして彼女のような境遇の女性は悲惨なのか。
バブルの頃、とても贅沢をして、散々いい思いをしてきたようだ。美人で、男たちからちやほやされて、仕事も選り取りみどりで、気付くと40代の後半になっていた。一度、結婚もした。でも、すぐに飽きて他の男を好きになり、離婚した。離婚のときに、マンションはもらったから、仕事はなくても、住む家はある。当座はしのげるだけの蓄えはある。
さぁ、そんな彼女にこれからどんな未来が待ち受けているのか。読みながら、辛い話になる、と最初は思った。だが、そんな予想を覆す。ノーテンキでハッピーな小説だった。このタイトルは強がりなんかじゃない。彼女はとても生き生きと毎日を過ごしていく。そんなバカな、と言いたいところだが、これはこれで凄いと感じた。
チラシを家に入れていく仕事をする。普通ならプライドが邪魔してそんな仕事は出来ない、と言いそうなところだ。だが、彼女は、気にしない。そこで、偶然一人のおばあさんと出逢う。彼女を助けたことから、老人たちのアイドルになる。今まで知らなかった世界が広がる。こんなところに、知らなかった冒険が待ち受けている。たいしたことではないけど、そういう些細なことが、繋がり、新しい可能性が見えてくる。幾つになっても、面白いことはある。現実はそんなに甘くはないだろう。でも、これを小説の中だけのお話だとは思わない。知らなかったこと、思いもしないこと、それが新しい自分を作る。そういうことについてのお話なのだ。
特別なことが描かれるわけではない。だが、彼女から目が離せない。随所に、彼女が昔の男たちと会う話が挿入される。そこで、彼らの今とあの頃とが対比されていく。後悔するのではない。前向きに今を考える上での参考にしていく。ささいなことしか描かれてない。でも、それだけで充分元気になれる。