習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『人類資金』

2013-10-29 22:50:43 | 映画
阪本順治監督最新作。4ヶ国をロケした超大作だ。M資金の謎を追ってさまざまな人たちが暗躍するサスペンス大作。手に汗握る、と言いたいところなのだが、なんだかよくわからない。何が起きているのか、どうなっているのか、あまりに複雑すぎて、僕にはそのへんの因果関係が見えてこないんですが、大丈夫か、と心配になる。でも、あれよ、あれよと見守るしかない。小説じゃないのだから、止まってくれないし、戻ってもくれない。スケールの大きい作品のはずなのに、なんだかちまちましていて、だんだんどうでもよくなってくる。

これはリアルな映画ではない。なんだかまるで夢の中のお話のようなのだ。この映画を見ながら、お金ってむなしいなぁ、と改めて思った。M資金があれば、日本の未来は明るくなる、はずもない。なのに、そのM資金を巡って、たくさんの人たちが夢を見る。そういう意味ではこれは『バージンパンケーキ国分寺』に似ている。(スケールが違うけど)

佐藤浩市演じる詐欺師が、とんでもない事件に巻き込まれて、なんだかよくわからない間に世界をまたにかけて右往左往するだけのお話だ。だが、この出来事を通して、彼は自分の本来の生き方に目覚める。お金なんかただの紙切れ、それ自体には意味がない。しかし、それを手に入れることに、人々は必死になる。信用経済と言いながら、人を信じない癖にお金を信じるって、何だ? でも、お金のために、あくせくしたり、苦しんだりするのは事実だ。紙幣ではなく、金(ゴールドのこと、ね)には価値があるのか? それだって微妙だ。

それもこれも、当たり前のことだ。しかし、この映画を見ていて、目の前の次から次へと起こるドラマよりも、そんなことをあれこれ考えていた。そのうち、この複雑なドラマとか、人間関係とか、なんてのはどうでもよくなり、ストーリーさえよくわからなくなってきたことは先にも書いたとおりだ。

でも、あまり気にしない。だって、なんか役者たちがただドタバタ走りまわっているだけで、あまり切実感がないのだから、何がどうしてどうなったか、というサスペンスよりも、結局お金じゃないんだよな、という結論だけが、頭に残るそんな映画だった。へんなの。






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