こんなタイプのホラー映画は今までなかっただろう。白夜の北欧を舞台にして、90年に一度の村祭りという特別な時間が描かれるのだが、その華やかで明るい風景の中で,とんでもない恐怖が始まることになる。幸せそうな村人たちの笑い声から、それは始まり、繰り広げられることとなる。お花畑の少女たち、そこで無邪気に踊る姿、それがホラーになる。
普通なら恐怖と闇とは表裏一体のセットになっているはず。でも、ここでは恐怖は、開放的な空間で、明るい陽射しの中で,起きる。2時間半というホラー映画にあるまじき長尺というのもこの映画に心惹かれた理由だ。なぜ、それだけの上映時間が必要になったのか。お話が複雑だから、というわけでもない。ただ、ディテールは実に丁寧に描かれる。そのせいでテンポはいささか悪くはなるけど、退屈はしない。ただ、あまりに荒唐無稽すぎて、最後はしらける。こんなアホな話しに2時間半もつきあったのか、と思うとがっかりする。
この上映時間を長いと感じさせないだけの内容が欲しい。このお話の底に漂う不気味なものが、ある種のリアルとして迫ってくるだけの仕掛けが欲しいのだ。それがないから、見終えてバカバカしいだけの印象しか残らない。雰囲気とか、狙いとか、今までなかった世界観を展開し切れていることは認める。それだけに、長さに見合うだけの内容がなければ、怖さまで減ずることになる。