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映画・演劇のレビュー

『1917 命をかけた伝令』

2020-03-05 23:24:39 | 映画

確かに、これは噂通りの凄い映画だった。ワンシーン、ワンカットでの119分という大胆な試みはこの映画の描こうとしたことを実に的確に伝える。このとんでもなき緊張感はそこから生まれた。特に前半戦の緊張感は凄いものがある。狭い塹壕の中を途切れることなくカメラは主人公の2人を追いかけていく。その執念のようなカメラワークに圧倒される。後半に入ると、さすがにそれだけでは持たないけど、敢えて最後までその姿勢は貫く。もちろん、実際はワンカットではないし、フェイクなのだが、いつまでたってもカット割りが成されていないことへの驚きは、彼ら二人のこの任務への想いや、彼らの置かれた状況を見事に象徴して、しかも、実際に何が起こるかわからない現実も感じさせるし、方法が内容と見事にマッチし、僕たち観客までもが、彼らと共に戦場を走り抜けているような気分にさせる。そこからは確かにサム・メンデス監督の意図が伝わる。撮影は困難を極めただろうが、それだけのことをしただけの意味はある。

カメラは自由自在に動き、止まらないから、見ていて、瞬きすら出来ない。ずっと、見つめ続けることになる。しかも、カメラは彼らからほとんど目を離さない。スクリーンには(ほぼ)ずっと、彼らの姿が映り込んでいる。そこから生じる圧迫感は凄いものがある。それだけに、この2人のうちのひとりが死ぬシーンは痛ましい。(きっとそうなるだろうとは思っていたけど、映画は当然そういう展開になる)そして、そこから先は当然ひとりになる。

後半戦、夜のシーンを挟んでしまうから、上映時間が彼らの体験した時間とイコールではないのが、残念だけど(そこまでの緊張感は持続しない)内容との整合性からそれは仕方ないのだろう。ただ、出来ることならリアルタイムであって欲しかった。時間の経過を示すのは夜の時間だけであるのなら、そこでカットを割っても構わない。リセットして、仕切り直しそこからは再びワンカット、というのでも構わないと思う。

方法が内容を凌駕してはならない。あくまでも方法は描こうとする内容に従属する。119分ずっと緊張が持続して、そこから生じるものがこの映画のテーマと直結する。そういう映画であったなら、これはもっと凄いものになったはずだ。実話をベースにしても、フィクションがテーマをさらに的確に表現するなら、方法や、史実に固執することはない。

 


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