この日本語タイトルはちょっと苦しい。ヒューゴは別に何も発明なんかしていないのだから、看板に偽りがある。でも、原題通り『ヒューゴ』だけではこの映画の内容がまるで伝わらないし、セールスを考えると、このくらいの嘘は必要なのかもしれない。だが、このタイトルでも、集客は望めないだろう。アカデミー賞を受賞してもこういうファミリー・ピクチャーはそれが集客にはつながらない。いろんな意味で難しい映画だ。
だが、劇場に見に行きさえすれば確実に満足がいく。作品の出来は最高だ。マーティン・スコセッシ監督がこういうタイプの映画を作るなんて、驚きである。これは彼の「映画への愛」が隅々にまで行き届いた心温まる傑作だ。だが、そんな映画を誰が見たいと思うのか、と言われると、ちょっと言葉に詰まる。残念ながら、今、映画を見に来るお客さんは映画が好きで来る客ではない。映画はただの娯楽のひとつでしかない。そういう観客にこの映画はアピールしないのだ。だから、「少年の冒険もの」としてのパッケージングが必要となったのだが、それでも、観客の食指はそそらないだろう。
不思議感満載で、驚きの世界を見せる家族みんなで楽しめる映画を目指した宣伝マンの意向とは裏腹に、映画自体はそんなものを求める観客の嗜好を満足させない。これが実を言うと子供向きではないからだ。マニアックな内容なのである。ジョルジュ・メリエスなんていう映画監督なんか知らないよ、という観客をターゲットにしなくてはならない。確かに駅構内の時計塔の裏側は不思議に満ちている。そこを縦横無尽に駆け抜ける少年とともに、カメラは実によく動き回る。そんなカメラワークだけで感動する。しかもそれを見事な3Dでみせるのだ。ここまでちゃんと3Dを使い切った映画は今までなかったのではないか。奥行き重視は『アバター』以来の現在の3Dの基本だが、それだけではない。縦に横にと複雑な空間を自由自在に動き回るカメラの軽やかさ。スコセッシは3Dに可能なあらゆる挑戦をこの1本に詰め込んだ。
舞台は1930年代のパリ。リヨン駅の巨大なセットを駆使して、人でごった返す中、そのたくさんの人々を掻き分けて、少年と、彼を追いかける犬と鉄道公安官のデットヒートを何度となく見せる。クライマックスの追っかけなんて圧巻である。手に汗握る。
全体を老人と少年の物語というオーソドックスなパターンにするのもいい。わかりやすい構造の中に盛りだくさんの溢れ出るイメージを盛り込んで、映画ならではの冒険を可能にする。まさにアメージングな映画だ。映画は驚きだった、というメルエスの感動をそのまま現代によみがえらせた。映画ならではの仕掛けを満載し、メリエスが求めた夢の世界を実現した。それは夢見ることを忘れないことが、生きていくうえで一番大事なことなんだよ、というスコセッシとメリエスからのメッセージだ。少年、少女がおじいさんの秘密に迫る、というお話の構造は、一種のパターンなのだが、そこを踏まえることが、この映画のお約束なのである。そういう意味ではこれは確かにファミリーピクチャーだと言える。みんなが何の心配もなく、期待して劇場に来てくれたならいい。そうすればこの映画は絶対にあなたを裏切らない。
だが、劇場に見に行きさえすれば確実に満足がいく。作品の出来は最高だ。マーティン・スコセッシ監督がこういうタイプの映画を作るなんて、驚きである。これは彼の「映画への愛」が隅々にまで行き届いた心温まる傑作だ。だが、そんな映画を誰が見たいと思うのか、と言われると、ちょっと言葉に詰まる。残念ながら、今、映画を見に来るお客さんは映画が好きで来る客ではない。映画はただの娯楽のひとつでしかない。そういう観客にこの映画はアピールしないのだ。だから、「少年の冒険もの」としてのパッケージングが必要となったのだが、それでも、観客の食指はそそらないだろう。
不思議感満載で、驚きの世界を見せる家族みんなで楽しめる映画を目指した宣伝マンの意向とは裏腹に、映画自体はそんなものを求める観客の嗜好を満足させない。これが実を言うと子供向きではないからだ。マニアックな内容なのである。ジョルジュ・メリエスなんていう映画監督なんか知らないよ、という観客をターゲットにしなくてはならない。確かに駅構内の時計塔の裏側は不思議に満ちている。そこを縦横無尽に駆け抜ける少年とともに、カメラは実によく動き回る。そんなカメラワークだけで感動する。しかもそれを見事な3Dでみせるのだ。ここまでちゃんと3Dを使い切った映画は今までなかったのではないか。奥行き重視は『アバター』以来の現在の3Dの基本だが、それだけではない。縦に横にと複雑な空間を自由自在に動き回るカメラの軽やかさ。スコセッシは3Dに可能なあらゆる挑戦をこの1本に詰め込んだ。
舞台は1930年代のパリ。リヨン駅の巨大なセットを駆使して、人でごった返す中、そのたくさんの人々を掻き分けて、少年と、彼を追いかける犬と鉄道公安官のデットヒートを何度となく見せる。クライマックスの追っかけなんて圧巻である。手に汗握る。
全体を老人と少年の物語というオーソドックスなパターンにするのもいい。わかりやすい構造の中に盛りだくさんの溢れ出るイメージを盛り込んで、映画ならではの冒険を可能にする。まさにアメージングな映画だ。映画は驚きだった、というメルエスの感動をそのまま現代によみがえらせた。映画ならではの仕掛けを満載し、メリエスが求めた夢の世界を実現した。それは夢見ることを忘れないことが、生きていくうえで一番大事なことなんだよ、というスコセッシとメリエスからのメッセージだ。少年、少女がおじいさんの秘密に迫る、というお話の構造は、一種のパターンなのだが、そこを踏まえることが、この映画のお約束なのである。そういう意味ではこれは確かにファミリーピクチャーだと言える。みんなが何の心配もなく、期待して劇場に来てくれたならいい。そうすればこの映画は絶対にあなたを裏切らない。