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映画・演劇のレビュー

第一次反抗期『いつまでも続くなら続け』

2012-02-29 20:13:19 | 演劇
 偶然にも初期のくじら企画と同じように3人芝居である。男3人のむさくるしい世界だ。父親が大竹野正典であることが、プレッシャーにならないわけはない。だが、春生くんはまるでそんなこと気にもしないように自分の世界を作ろうとする。しかも、とても慎重に。
 
 作、演出、出演の大竹野春生は、とても誠実に自分の劇世界を立ち上げようとする。彼らしい。だが、それがどこまで考えてのことなのか、よくわからない、のもいい。子供の頃から父親の芝居を見てきて、その影響を受けないわけがない。だからこそ、彼は時間をかけて、ゆっくりとこの第1作にたどり着いた。自分に出来ること、自分がしたいこと、それを真摯に見つめ、作品化する。これはそんな彼の真面目さがしっかりと伝わってくる好篇である。

 確かにラストは甘いし、あまりにも話が、ちゃんと理に落ち過ぎて、反対に納得がいかないのだが、そこも含めて彼の個性だと、受け止めよう。彼はバランス感覚を大事にする。すべてが妄想だったというオチは本来なら禁じ手である。しかし、すべてをクリアにする最終手段としてならOKだろう。だが、作品として本当に欲しいものはその先にある。3D(藤井利之)がダメ男(ダメで、だらしない、どうしようもない、ということで3D)であることは、わかったから、そんな彼が自分と向き合うことで、どこに向かっていこうとしているのか。その方向性をもっとしっかりと示してもらいたい。

 「変態よいこ」の会のオフ会に始めて参加した3Dが、そこで同じように、自分に対してもどかしさを抱えている変人たちと出会い、彼らの話を聞きながら、そこに何を感じたのか。

 それぞれが、なぜ今の自分になったのかを、語る独白部分がお話の中心を為すのだが、そこに到るまでの導入部分がおもしろいし、3人のアンサンブルが優れている。それだけに独白部分だけで終わらせるのは惜しい気がする。3人が3人ともとても誠実で一生懸命生きていることが伝わってくる。だからこそ、そこから先が見たいのだ。

 余談だし、これは本人にも喋ったことなのだが、コトリ会議の山本正典のセーラー服が、とてもよく似合っていて、おかしかった。なんだかとても自然なのだ。無精ひげが生えていても大丈夫なくらいに自然体。きっと普段からこの人は着ているのではないか、とすら思わせる。それって演出の力か?


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