なんとなく気になり借りてきた。パッケージを見て、面白そうだったから。リドリー・スコット製作のSF映画。監督はドレイク・トレマーズという人。この人の映画は初めて見た。お話がブレードランナーっぽいので、気になったのだ。先日の『ブレードランナー』の続編に先立ち作られていたようだ。リドリーは自分が手掛けるわけではないけど、きっと今もあの映画のテーマにこだわりを持っているのだろう。
説明を一切拒絶した映画だ。描かれている時代背景もわからないまま、描かれる現実と向き合う。去勢されたように穏やかに生きる人たちは無気力と言うよりも、自我を持たないようだ。人類のほとんどが死滅した後の世界。戦争が起きて世界は滅んだらしい。でも、そんなこと、一切言ってないで、お話は始まっていた。だから、彼らが何者なのかはわからない。最初はレプリカントだと思っていた。彼らが意思を持つ話ね。
だが、映画を見てから(映画を見ているぶんには気付かない)ネットの解説を見たら、先に書いたような記述が出てきてびっくり。ということで、ほんの少しの生き残りは、感情を管理されて、静かに生きているらしい。現状の体制に疑問を持ったり、ほんのちょっとでも感情を持つと、いつのまにか排除される。そんな世界で恋愛感情を抱くことになる2人が主人公。まぁ、よくある恋愛映画の必殺パターンなのだけど。
ありきたりのお話なのだ。だけど、白一色の衣装とか、表情のない人々とか、まるで情報を流さないで展開していくお話とか、スタイリッシュな映画で、現実感のない安藤忠雄の建造物でロケしたリアルな未来造形が嘘くさいCG映画とは一線を画する。何も言わないまま、排除されて消えていく人々が不気味だ。ラストはロミオとジュリエットのような展開になり、ちょっとなんだか、と思うけど。それにお話の展開が緩慢で、乗れない。ドキドキさせない。少し退屈。でも、それも作り手の狙いみたいだ。
主役のニコラス・ホルトとクリスティン・スチュワート以外には、ほどんど誰も出てこない、わけではないけど、そんな印象を与える。登場人物は建物と同じで、背景のように描かれるだけだからだ。映画自体は別に面白いわけではないのだけど、なんとも不思議な映画だった。アメリカ映画なのに、こんな映画もある。